現行の日米安全保障条約が発効して、23日で60年となる。

 条約の重要性は、長年にわたって両国に深く根付いている。

 だが近年、世界2位の経済力を背景に外交・軍事面で周辺国に攻勢をかける中国の存在が無視できなくなっている。

 トランプ米政権は中国との対立を深め、「新冷戦」という言葉も聞かれるようになった。日本があまりに米国に依存しすぎれば、米中の衝突に巻き込まれるとの不安も存在する。

 こうした状況下で、今後の安全保障をどう考えていくかは難しい問題だ。中国の「脅威」の実態を冷静に見極め、日米安保の意義と役割を再検討し、新たな戦略を練り直す必要がある。

 新型コロナ感染が世界に拡大するさなかも、安全保障を巡る米中のせめぎ合いは続いた。

 中国は、ベトナムと領有権を争う南シナ海に行政区を新設。台湾海峡に空母を派遣した。

 これに対抗して、米国は軍艦船を南シナ海や台湾海峡に航行させ、インド太平洋地域で潜水艦の動向を公表するなど、中国へのけん制を一段と強めた。

 日本周辺では、沖縄県・尖閣諸島周辺で中国海警局の船が日本領海に侵入するなど、「平時とはいえない」(日本政府関係者)状態が再び続いている。

 日本は、米軍の打撃力に頼ることを前提に、日本施政下の武力攻撃への対処を定めた安保条約第5条が尖閣にも適用されることを繰り返し確認してきた。

 宮古島などへのミサイル部隊配置や共同訓練など、中国を念頭にした自衛隊と米軍との一体化も加速させている。

 すでに集団的自衛権行使を解禁して地理的な制約なしに米軍の後方支援を可能にし、宇宙作戦隊創設などで宇宙やサイバーにも協力分野を広げた。

 その対象は憲法解釈の変更など「国のかたち」に関わる部分にまで深く入り込んでいる。

 中国の存在が強大になるほど米国との一体化はますます強まる。このままでは、米国への依存しか外交上の選択肢がなくなることにならないだろうか。

 安倍晋三首相はトランプ政権との良好な関係を「最大の対中抑止力」と考えているようだ。だが、トランプ氏は安保条約を「不公平」と批判、米軍駐留経費などの負担増を求めている。

 トランプ氏が日米安保の意義をどのように理解しているかは不明だが、首脳同士のつながりに頼りすぎる関係は危うい。

 中国は、新型コロナの発生源を巡って調査の必要性を訴えたオーストラリアの農産品に関税を課すなど、軍事以外でも外国への攻撃的姿勢を強めている。国民の不満を国外に向ける狙いがあるとみられる。

 日本は中国と経済的な関わりが密接で、政府は現在、関係改善を模索中だ。米国のような対決姿勢一辺倒では済まない。

 しかし、力を誇示し、国際社会に緊張を与える中国の振る舞いを見過ごしにもできない。

 「世界の警察官」を辞めると宣言した米国と、軍事力を増強する中国との間で、日本はどのような立ち位置を決めるか。現実を見極めた外交構想力が求められている。