戦後間もなくの教科書など豊富な学校資料を展示している京都市学校歴史博物館(京都市下京区)

戦後間もなくの教科書など豊富な学校資料を展示している京都市学校歴史博物館(京都市下京区)

 明治期に「学校」が誕生しておよそ150年。学校現場にはこれまで、膨大な資料が蓄積されてきた。しかし、少子化の影響を受けた学校の統廃合が進み、それらの多くは散逸したり、廃棄されたりしている。身近すぎて気づきにくいかもしれないが、実は貴重な資料が多く、いかに未来につないでいくのか真剣に考える時期にきている。

 学校資料とは何を指すのか。明確な定義はないが、写真、教材、児童生徒の作品など幅広い。学校に関わるあらゆる資料と言っていいだろう。丹念に見ていくと、各時代で公文書だけでは分からない教育の実態や子どもたちの姿、地域の歩みが浮かび上がってくる。例えば戦時中の日記。回想ではない当時に書かれた資料であり、子どもから見て生活の中にあった戦争がどのような位置づけだったのかが伝わる。

 文部科学省によると、2002~17年度に全国で7583校の公立学校が廃校となった。京都府は139校、滋賀県は34校に上る。それでも学校資料の消失が注目されることはほとんどない。浜松学院大短期大学部講師で教育史が専門の和崎光太郎さん(41)によると、統廃合による資料の取り扱いは(1)統合先に移転(2)校舎が残る場合はその場で保管(3)廃棄-の3パターンが考えられるという。保存期限内の公文書に類する資料以外は学校判断にゆだねられ、必要性を十分に考慮せず安易に廃棄されるケースは少なくないという。

 危機感を募らせた京都をはじめとした関西の学芸員や大学教員、図書館司書らが17年4月に「学校資料研究会」を結成した。今年に学校や地域で学校資料を活用するためのハンドブックを作り、学校内の空きスペースに資料を展示する「博物館」の開設や授業で使うアイデアを提案している。研究会の代表を務める和崎さんは「価値を知れば、保存しようという機運は高まるはず。一番好ましいのは、資料が生まれた学校や学区に残ること」と話す。

 京都市には学校の歴史資料や文化財を集めた全国でも珍しい市学校歴史博物館(下京区)があり、まさに活用を実践している。戦中戦後の教育、学校給食、地域との関わりなど多岐にわたるテーマの展示から学校の変遷が深く理解できる。昨年度の入館者数は2万8416人と過去最高を更新し、関心の高さをうかがわせる。学芸担当の林潤平さん(31)は「学校体験は誰もが持っていて、これほどたくさんの人が共有しているものはない。資料は宝の山だ」とその可能性を指摘する。

 統廃合だけではなく、自然災害などで資料が失われるリスクは常にある。保管場所や予算といった課題はあるだろうが、早期に対策を講じる必要性を感じている。デジタル化も一つの案だろう。今、この瞬間にも歴史の証人である資料はなくなっている。