京都に住むまで餃子(ギョーザ)は家で食べるものだった。昔、中華料理屋さんでコックをしていたお父さんが作る餃子は本当に美味(おい)しくて、たまにラーメン屋さんや中華屋さんで食べるどんな餃子よりも大好きだった。

 ひとつひとつ丁寧に作られた餃子が無性に恋しくなることが月に何度かある。どんなときにそんな気分になってもいいように、いくつもの町にお気入りの餃子を出すお店を見つけておく。それは僕にとってひとつの楽しみでもあった。

 二条駅近くには、餃子好きなら必ず入ってみたくなってしまうお店がある。きれいな赤い暖簾(のれん)が目印の龍園という名前のお店は住宅地の中にひっそりとある。

 カウンターだけの店内には年季の入った手書きのメニュー、注文が入ってから皮を一枚一枚延ばすのに使われる古ぼけた機械。何十年もの間この町の片隅でずっとこうやって餃子が作られ続けている、という景色や時間を想像するだけでもここに来た意味はある。

 餃子はもちろんだが、僕がおすすめしたいのがラーメンだ。昔ながらの中華そば。少し生姜(しょうが)が効いた香りは、もうなくなってしまった「珍元」を思い出す。ずっと残ってくれたらいいな、と思う。