平日の夕方、北大路駅から西にてくてく足を進めると、生活の匂いがそこかしこからしてきてなんだか胸がときめいてしまう。

 その匂いにつられるまま北大路新町を上がってみる。どこか昔ながらの景色が残った町並みは独特の空気を持っていて、まだ京都の右も左も分からなかった大学生の頃にあてもなくふらふらと自転車を漕(こ)いでいたときのことを思い出す。

 そんな町並みにポツンと佇(たたず)むドーナツ屋さんがある。それが『かもドーナツ』だ。ショーケースにはミントやグリーンの色鮮やかなドーナツや白い砂糖がたっぷりかかったチョコドーナツ、シンプルで、まさにドーナツ色と呼びたくなるような薄茶色のドーナツが並んでいて、ずっと眺めていたくなる。

 テイクアウトした少し大ぶりでキュートなドーナツを食べながら、夕日がなかなか沈まなくなった町を歩く。今度は新町通を下がっていくと、下校中の中学生や高校生とすれ違う。自分が中学生の頃、帰り道にこんな素敵(すてき)なお店があればな、とふと考える。ドーナツの穴を覗(のぞ)き込めば、小さなドーナツ屋さんが町の毎日にプレゼントしてくれた素敵な瞬間たちが見えるような気がした。