大学4回生の頃、卒業制作として船岡温泉の周辺のお店を使ったライブイベントを半年間かけて制作するというプロジェクトがあり、多い時だと週に何回も船岡に足を運んでいた。

 北大路駅からバスに乗り換えて向かうこともあったけど、大抵は宝ケ池の町から自転車で坂を下っていくことが多かった。そんな日々のなか、僕がささやかな楽しみにしていたのが、御旅飯店に寄ることだった。

 神社の隣に煌々(こうこう)と明かりをともす年季の入った外観。ひっきりなしにかかる出前の電話と活気のある厨房(ちゅうぼう)。真っ赤なカウンターと週刊漫画と見上げるテレビ。壁一面の手書きのメニュー。僕にとって「完璧な」町の中華屋さんで京都に来てからずっと探していたお店のように思えた。

 僕はとにかくここの麻婆(マーボー)豆腐が好きだ。四川風や広東風といった枠組みから遠く離れたところにあるような、ここにしかないドロッとして旨味(うまみ)が詰まった麻婆豆腐。熱々のご飯にかけながら食べるサービス定食が本当にたまらなく大好きだ。移転の問題があったりして不安な時期もあったけど、今も変わらず町の人たちに愛され続けている。いつまでもそこにあってほしいお店の一つです。