街中に自動運転のバスが走り、住民は自由に利用できる。個人データを登録すればあらゆる行政手続きがスマホからできる。買い物はキャッシュレス。健康データも登録され、体調不良ならスマホにアドバイスが届き、遠隔診療を受けられる…。

 政府が内閣府のホームページで公開しているビデオで描く、人工知能(AI)などをフルに活用した「スーパーシティ」のイメージだ。

 閉会した通常国会で、「スーパーシティ」を進めるための改正国家戦略特区法が成立した。

 政府は便利で快適な最先端都市のイメージを振りまくが、果たしてそれだけだろうか。懸念が残ることがいくつもある。

 スーパーシティでは、行政が持つ膨大な個人情報を本人同意なしで企業などに提供される可能性がある。

 提供された個人情報がどのように使われるかを、住民が関知できないとすれば問題だ。

 特区に立候補する自治体が、ある地域をスーパーシティ構想の対象地域にしようという場合、そこの住民がどのように関与できるのかも、明確になっていない。

 改正法は、車の自動走行やキャッシュレス決済、ドローン配送、遠隔医療などを特区でまとめて推進する。本来なら複数の省庁にまたがる許認可事項をひとまとめにして規制を緩和する狙いがある。

 内閣府は改正法の成立後、住民らの関与の方法について、議会の議決や住民投票、関係者でつくる「協議会」の議決など4案を示した。

 事業者を含めた協議会の構成や議決の仕方など具体的な点は、自治体や各地域が決めるという。

 単独でスーパーシティの案をつくれる自治体はない。専門知識や技術、情報を持つ業者が立案に深くかかわり、住民不在にならないか。便利さばかりが強調され、プライバシーや住民主権の議論が置き去りにされかねない。

 国会では、新型コロナウイルスの対応に多くの時間が割かれた。スーパーシティについての議論が十分に深まったとは言い難い。

 参院では個人情報の保護の徹底など、15項目の付帯決議が行われた。

 構想案はすでに全国約50の自治体がつくり始めている。政府は秋にも募集を始め、5自治体ほどを選ぶ方向だが、急ぐ必要があるだろうか。

 安倍政権は特区に熱心だが、不透明なことが度々ある。今回は特区選定の過程について、国会審議を通じて透明性を確保する必要がある。

 カナダ・トロント市では、街中の監視カメラが収集した住民の行動データをIT大手グーグルが利用する計画が、住民の反対などで中止になったという。

 一方、スペインのバルセロナ市では住民と行政、業者が対等の関係で個人情報の扱いなどを議論しているという。

 多くの住民が主体的に参加する仕組みが求められている。