僕のお父さんは昔、中華料理のコックをしていたそうだ。僕が生まれた頃にはもう違う仕事を始めていたので、白いコック着姿のお父さんを見たことはないけれど、週末になるとよく晩御飯にいろいろな中華料理を作ってくれた。お父さんが作る麻婆(まーぼー)豆腐や餃子(ぎょうざ)は、お母さんの卵焼きやグラタンや冷製じゃがいもスープと同じように僕にとってとても大切な思い出の味だ。その影響もあって僕もすっかり中華料理が大好きになってしまった。

 京都の町には、ついつい暖簾(のれん)をくぐってしまいたくなるような魅力的な雰囲気の中華屋さんがたくさんある。どの町に行っても必ず一つは好きな中華屋さんがあるのだ。

 四条大宮から少し東に進み、堀川通を超えたところにある「中華処 楊」はこの町の僕のお気に入りのお店だ。どこか高級感があって他のお店とは少し違う端正な料理が多い。それでいて値段は良心的なのだ。

 特に、ここのチャーシューメンは、もはや美しいとすら感じるキリッとした美味(おい)しさで、本当に大好きだ。そしてなにより食後にサービスで出てくる一口サイズの杏仁(あんにん)豆腐が中華の優しさを感じさせられて、またすぐに来たくなってしまうのだ。