相手と組み合えないため、道着のみを握り、投げ技の練習に励む柔道部員。マスク着用も義務化されている(京都学園高)

相手と組み合えないため、道着のみを握り、投げ技の練習に励む柔道部員。マスク着用も義務化されている(京都学園高)

 新型コロナウイルスの感染拡大は全国高校総体(インターハイ)や夏の甲子園など高校生アスリートの集大成の場を奪い去った。各学校で運動部は再開したが、感染防止対策や代替大会の模索、進学など従来とは異なる課題に直面している。

 畳4枚につき1人ずつ立ち、口元にはマスク。練習を再開した京都学園高柔道部の道場に、大きな声を出して相手と組み合う普段の光景はない。「次、打ち込み」。合図とともに選手が手にしたのは1着の柔道着。目の前にいるはずの相手を想像しながら黙々と投げの動作を繰り返した。

 「相手がいてこその柔道。今は我慢しないといけない。インターハイ中止はショックだが事実を受け止めないと前に進めない」と竹嶌真慧主将は胸の内を明かした。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、全日本柔道連盟は5月に練習再開の指針を全国に通達した。段階的な内容をまとめ、第1段階は相手と組み合わない練習に限定し、マスク着用を義務付けた。第2段階も、自由に技を掛け合って攻守を磨く実戦形式の練習「乱取り」は禁止された。

 現在、京都府は第1段階、滋賀県は第2段階の基準が示され、対外試合ができる見通しは立っていない。西田勇生監督は「乱取りをやらないと試合の備えにならない。せめて対人で組み合える段階になれば」と話す。

 他にも相撲やレスリングなど相手との接触が基本となる各競技団体は感染防止を理由に密着する練習を禁止している。基本的なトレーニングで筋力は鍛えられるが、鳥羽高相撲部の井平晶之監督は「土俵で生かせるかは別問題。まわしを着けて相手と組むことが基本」と困惑する。

 感染防止対策に頭を悩ませているのは格闘技系の競技に限ったことではない。室内競技の卓球やバドミントンは風や光の影響を受けないように普段は閉めている体育館の窓を換気のために開けざるを得ない。選手の距離が近いダブルスの練習もできない。剣道はマスク着用の上、「面」「胴」など技を仕掛ける際の発声を控え、用具の消毒を徹底している。

 指導現場にコロナ対策という新たな難題が加わる形となったが、元京都府立高教諭で追手門学院大の有山篤利教授(体育科教育学)は「部活動の本質を問い直すチャンスだ」と指摘する。

 長時間練習の見直しや強権指導からの脱却など「部活改革」が強調される中、有山教授は「部活動は本来、自由かつ自主的な活動で試合の勝ち負けだけではない。技を極める、心を磨く、理論を追求する、仲間と語り合うなど多様なスポーツの価値を享受できる場に立ち返るべきだ」と語る。