ビジネス経験を生かしスポーツの価値向上に努める田中さん(東京都中央区)

ビジネス経験を生かしスポーツの価値向上に努める田中さん(東京都中央区)

 日本スポーツ協会(旧日本体育協会)のブランド戦略委員である田中安人さん(54)は、同協会の広報戦略の立案を担っている。フェアプレー教育の促進など、社会においてスポーツの価値をいかに高めるかが課せられた役割だ。牛丼チェーン「吉野家」で商品開発や出店戦略を統括するチーフマーケティングオフィサー(CMO)のノウハウも生かす。

 「スポーツ、ラグビーのおかげで今がある」と目を細める。だ円球との出合いは中学時代。故平尾誠二さんらがいた伏見工高(現京都工学院高)の日本一を花園ラグビー場で目の当たりにし、洛水高では競技に没頭した。ルールを守り、団結や自己犠牲を尊重する精神を学んだ。全国大学ラグビーで9連覇した母校の帝京大・岩出雅之監督が実践する「自立型学習組織」を解き明かす本も企画した。

 広告代理店を経営していた時、スペインサッカーの強豪レアル・マドリードの来日に携わるなど、海外のスポーツ事情にも関心を持つ。親、子、孫の3世代にわたりスタジアムの席を保有し続ける例を挙げ「日本でもスポーツを文化に昇華させたい」と力を込める。

 新型コロナウイルスの影響で日常からスポーツが消えたが、かえって競技ができるありがたさや観戦、応援の新たなサービスが生まれる状況を前向きに捉えている。簡素化を打ち出した東京五輪・パラリンピックに向け「コロナでスポーツの本質的な価値が明確になった。後世につながるコンセプトを開発することが日本の使命」と提言する。
 

 たなか・やすひと 京都市伏見区出身。洛水高ラグビー部ではFWで京都大会ベスト8。帝京大卒業後、流通チェーンのヤオハンジャパンに就職したが、29歳の時に倒産。広告制作会社などを経て独立し、4年前に吉野家のCMOに就任。日本スポーツ協会ではフェアプレイ委員会選考委員長も務める。東京都世田谷区在住。