「男らしくなさい」とニュース映像から流れるのを聞いて、どきっとした人もいただろうか。逮捕された河井案里容疑者が県議時代、そう言って知事に引責辞任を迫った▼「男らしく」は性差別にもつながり、今ではほとんど使われなくなった。同じく「女の腐ったような」もだめだが、こちらは別分野で「腐女子」という言葉もあってややこしい▼いっこうに死語にならないのが「政治とカネ」である。参院選を巡り100人近くに現金を配っていたという河井前法相夫妻の逮捕容疑にはびっくりした▼平成時代の政治改革は憲法改正に匹敵するような大きな変化だったと、京都大教授の待鳥聡史さんが近著で言っている。だがそのきっかけだった政治とカネの問題は、改革から取り残されているような気もする▼まさか「政治家らしくなさい」と誰かに言われて配ったわけではあるまい。夫の克行容疑者は買収を否定しているというが、当選祝いや陣中見舞いでも市民感覚とは遠い。コロナ後の新生活が求められる一方、政治とカネの在り方は古くて新しい課題だ▼「男らしいってわかるかい ピエロや臆病者のことさ」―昭和の昔にそんな歌があった。案里容疑者が生まれたころだが、11歳上の夫なら分かるかもしれない。今聞けばきっと苦みも増している。