「山犬物語」を出版する山下泰三さん(京都市西京区)

「山犬物語」を出版する山下泰三さん(京都市西京区)

 40代で目の病気を患い、54歳の時に失明した経験を持つ京都市西京区の山下泰三さん(72)が絵本「山犬物語」を出版する。盲目の馬との出会いをきっかけに生きる希望を取り戻した経験を基に、動物と人間の神秘的な関係を描いた2本の童話を収めている。山下さんは「新型コロナウイルスで不安な日々が続く今だからこそ、ほっとできる話をつづった」と話す。

 完全に視力を失い、仕事を辞めた当時は、自殺を考えるほどふさぎ込んでしまった。転機になったのは、見かねた妻に促されて2人で訪ねた北海道での乗馬体験。見えない中で得た風を切る感覚や草のにおいに、少しだけ心が癒えたという。
 その後、青森県に盲目の馬がいると聞いて会いに向かった。普段は暴れ回る馬が、山下さんの前では落ち着いた。「馬との奇跡的な出会いを通してまた生きていこうと思えた」といい、現在は障害児や不登校の子を対象にしたホースセラピーの活動に取り組んでいる。
 童話を書き始めたのは約5年前から。「五条一馬」のペンネームで活動している。今回収録した2話はそれぞれ、犬とオオカミに出会った人々が不思議な体験をする物語だ。「動物から元気をもらえた経験から着想を得つつ、老若男女問わず誰でも楽しめる内容にした」という。
 7月1日から書店などで発売する。文芸社。1210円。