イラスト・冨田望由

イラスト・冨田望由

<いきものたちのりくつ 中田兼介>

 動物の多くにはオスとメスがいて、繁殖するときにはそれぞれが精子と卵を作ります。この二つが合体するのが受精で、両親からの遺伝子が組み合わさって新しい性質を持った子ができます。

 私たちほ乳類は、できた子をしばらくおなかの中で育てます。そのため、受精はメスの体の中で起こる必要があり、交尾をしてオスがメスの体の中に精子を送り込みます。一方、体の中で受精する動物であっても、交尾をしないものがいます。森の落ち葉がたまった中にいるトビムシは、その代表です。

 交尾しないでどうやって受精するのか? 要はメスに精子を渡せれば良いのです。そのためにトビムシのオスの中には、繁殖の際に、精子が詰まった袋(精包(せいほう))を作り、そこら中にばらまくものがいます。一方のメスは、精包を見つけると拾い上げ、おなかの穴から自分の中に取り込みます。ここでは交尾どころかオスとメスの接触さえないのです。なんとも奥ゆかしいではありませんか。昔の人が恋文をそっと落として拾わせたことを思い出してしまいます。

 マルトビムシの一種はもう少し積極的で、まずオスとメスが頭を突き合わせ、横にステップを踏んだり、押したり引いたりのダンスで求愛します。そうして良い雰囲気になってきたところでオスはクルッと回って腹部でプニュッと精包を作り、メスの前に置きます。受け取ってもらえれば成功です。しかしワルシャワ農業大のマレク・コズロフスキーさんたちによると、精包はオスの前でメスに食べられてしまうことが多いのだとか。あーあ、というオスの声が聞こえてきそうです。

 山頂は一つでも、そこに登る道はいくつもあるわけで、精子と卵が出会う方法には他にもいろいろなものがあります。後の回で紹介できるかもしれません。お楽しみに。(京都女子大教授)

◆中田兼介 なかた・けんすけ 1967年大阪府生まれ。京都大大学院で博士号取得。著書に「クモのイト」「びっくり!おどろき!動物まるごと大図鑑」など。「図解 なんかへんな生きもの」を監修。