沖縄はきのう、太平洋戦争末期の沖縄戦で命を落とした人々を悼む「慰霊の日」だった。壮絶な地上戦で20万人以上が亡くなり、住民ら非戦闘員の犠牲は約9万4千人に上った。

 全戦没者追悼式の平和宣言で、玉城デニー沖縄県知事は、米軍人らによる事件・事故や航空機騒音に触れ、戦後75年を経た今も基地負担が県民生活に多大な影響を及ぼしていると訴えた。

 安倍晋三首相もビデオメッセージで、沖縄に米軍基地が集中する現状は是認できないとして「基地負担の軽減に向け、確実に結果を出す決意だ」と述べた。

 だが、県民の思いと政府の対応が一致しているとは言えない状況が続いている。不合理な負担を強いられている沖縄の現状と将来について、あらためて国民全体で考える契機としなければならない。

 戦争時、沖縄は本土防衛の「捨て石」にされ、日本兵による避難壕(ごう)からの追い出しや自死の強制などが各地で起きた。住民の保護を無視した軍の作戦が、県民の大きな犠牲につながった。

 戦後も沖縄は重い基地負担にあえいできた。国土面積の0・6%しかない県内に、現在も米軍専用施設の7割が集中している。県民には、今も身代わりにされているとの思いが根強くある。

 市街地にあり「世界一危険」とされる普天間飛行場について、政府は名護市辺野古への移設を進めている。普天間の閉鎖は誰もが必要と認めるところだろう。

 だが、辺野古への移設を県民は明確に否定している。昨年2月の県民投票では反対が7割超となり、今月7日の県議選でも移設反対派が過半数を占めた。

 政府は中断していた移設工事を県議選後の12日に再開したが、民意を軽視する強行は国への不信感を強めるだけではないか。

 政府は辺野古を唯一とする考えを見直し、まず、米国と普天間の運用停止に向け交渉を始めるべきだ。他の基地についても、訓練移転などさまざまな角度から危険性除去の可能性を探る必要がある。

 戦争の記憶をいかに次世代へ継承していくかも大きな課題になっている。

 沖縄戦を体験した県民の多くが80代以上となり、戦禍に住民らが身を寄せたガマ(自然壕)などの荒廃も心配されている。

 悲惨な歴史を追体験し、教訓を学ぶことが不戦の誓いの糧になる。戦争遺跡の保全や調査にも急ぎ取り組むべきだ。