京都府警の「手上げ横断」教育の経緯

京都府警の「手上げ横断」教育の経緯

 横断歩道は手を上げて渡りましょう―。交通安全教育の「常識」と思われがちだが、実は京都府警は42年間、手上げ横断を指導していない。国家公安委員会が1970年代後半に手上げ方式を改め、横断歩道では車の通過を待つよう指導方法を改正したためだ。だが近年、車が横断歩道で一時停止しない道交法違反が横行。府警は対策として、子どもたちや高齢者向けに「手上げ」教育の復活を検討し始めた。

 府警によると、手上げ教育は63年、秋の全国交通安全運動を機に始まった。ドライバーが歩行者を見つけやすくなり、事故防止に有効とされた。国家公安委員会が定めた「交通方法の教則」(72年施行)には「(信号のない横断歩道では)手を上げて合図をし 車が止まってから横断」と明記されていた。

 ところが78年、教則が改正される。「車が近づいている時は通り過ぎるまで待つ」と変わり、手上げの記述は消えた。その理由について、府警交通安全教育センターの藤原省三所長補佐は「古い話で分からない。手を上げれば安全と思って事故に遭うケースがあったのか」と首をかしげる。

 教則に倣い、府警は同年に手上げ教育をやめた。以降、現在は年間6700回(2019年)を数える交通安全教室では「安全確認した上で車の通過を待つ」を正しい横断方法として伝えている。

 手上げが再脚光を浴びたきっかけは、日本自動車連盟(JAF)が昨年実施した調査だった。横断歩道を渡ろうとする歩行者がいる状況で、一時停止した車の割合が京都府は5%しかなく、全国ワースト3位に沈んだ。府警が他の都道府県警に聞き取ると、東京や滋賀など29都道県は手上げ教育をしており、同調査の停止率トップ10のうち9県を含んでいた。

 昨年11月、府警の担当者は京都市内の横断歩道で効果を検証した。手を上げて車が一時停止した割合は、何もしない場合の5倍に及んだ。「横断する意思がドライバーに伝わる」と実感した府警は今年3月、学識者を交えた「安全横断検討会議」を立ち上げ、手上げ教育を復活させるか検討に入った。

 藤原所長補佐は「40年間続いた方法を変えるなら、根拠が必要だ。専門家の議論を踏まえて横断歩道の安全対策を進めていく」としている。