たけした・よしき 1951年生まれ。龍谷大在学中に点字の司法試験を実現させ、81年に9回目で全盲初の合格者に。小林照幸氏「全盲の弁護士 竹下義樹」(岩波現代文庫)が半生を紹介。

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、社会の矛盾がより明確になってきた。とりわけ、障害のある人が大きな矛盾の中で苦しんでいる。

 そもそも、障害のある人にとって暮らしやすい社会はいまだ実現していなかったところに、感染が拡大したことで、障害のある人は外出すらままならなくなったのである。

 国連総会において、2006年12月、障害者権利条約が満場一致で採択され、わが国も14年に同条約を批准した。この条約は、障害のある人が不利益を被らないためには社会が変わらなければならないとする。

 すなわち、障害のある人が不利益を受けるのは障害ゆえではなく、社会が障害のある人が暮らしやすい環境をつくり出せていないからで、障害のある人が不利益を受ける社会的障壁を取り除くことこそが重要であることを明確にしたのである。

 視覚障害のある人は、白杖(はくじょう)を使用し、あるいは盲導犬を使って単独で外出する場合と、ガイドヘルパーと呼ばれる手引きを受けて外出する場合がある。単独で外出した場合、スーパーや駅で「あまり接近しないでください」と注意され「ソーシャルディスタンス」を求められるし、ガイドヘルパーの利用は「密接」が不可欠であることからその利用に支障が生じている。

 コロナ禍以後の「新しい生活様式」が提唱されているが、そこに障害のある人の存在は意識されているのであろうか。

 新型コロナウイルス感染拡大は、社会のありようを見直す大きなきっかけになっている。医療、福祉、教育のあり方が問われ、そして貧困による格差の是正が求められている。

 感染症の拡大は、すべての国民の命と暮らしを奪う。ゆえに、その予防策はすべての国民にとって的確なものでなければならない。そこには障害の有無はない。それだけに、感染拡大の今こそが障害の有無や経済的格差だけでなく、すべての国民の基本的人権が意識された社会づくりをするチャンスである。

 私は、すべての国民に10万円が支給される特別定額給付金を、京都市内で野宿生活を余儀なくされている方も受け取れるようにするためにはどうすればよいかを関係者とともに考え、その橋渡しのために動こうとしている。

 近年は「誰も取り残されない社会」というフレームが多用されているが、本当に国も自治体も、そして社会全体が、意識できているのであろうか。私は、障害のある人も含めたすべての人が暮らしやすい社会づくりのために何ができるかを考え続けたい。(弁護士)