昨年死去した中曽根康弘元首相に、自民党の定年制による引退を求めたのは小泉純一郎元首相である。2003年、東京都内の部屋を訪れたが、なかなか話を切り出せない▼「(中曽根さんは)どこでも働けるのだから…」と言い残して去ったとされる。あの小泉氏も、「終身比例一位」を約束された大先輩には気後れしたのだろう。中曽根氏の「自省録」(新潮文庫)に詳しい▼目からうろこの落ちるような逸話に触れるのが、回顧録の面白さである。米大統領補佐官を解任されたボルトン氏が出版したのも期待に応えてくれそうだ。なにしろ、お題は「それが起きた部屋」という▼それによると昨年6月、中国の習近平国家主席と会談したトランプ米大統領は、米国から農産物を購入し、自分の再選を支援するよう要請したとされる▼イランとの仲介をトランプ氏に頼まれて失敗した安倍晋三首相は、成果の代わりに米農産物の輸入拡大を要求されたと書かれた。この流れからすると、在日米軍の駐留費を増額する要求も理解できる▼米政権は、機密情報を含むとして出版の差し止めを訴えた。回顧録の信ぴょう性に、お墨付きを与えたようなものではないか。「(トランプ氏が)1期だけの大統領になるのを望む」とするボルトン氏に同調したくなってくる。