米国外交の舞台裏が暴露され、トランプ大統領にとって「不都合な事実」が公になった。

 ボルトン前大統領補佐官が、政権の中枢で携わった外交について克明につづった回顧録「それが起きた部屋」を出版した。「米国第一」主義を掲げ、11月の大統領選での再選を最優先にしたトランプ外交の危うさに警鐘を鳴らした形だ。

 ボルトン氏は歴代の共和党政権で要職を務め、トランプ政権でも2018年4月に安全保障担当の補佐官に就任して、外交のかじ取りをしてきた。しかし、対外政策を巡ってトランプ氏と衝突し、昨年9月に解任された。

 メモ魔として知られ、回顧録の信ぴょう性は高いとされる。ただトランプ氏に複雑な感情を持つとみられ、全ての記述を額面通りに受け止めるわけにはいかない。

 とはいえ元側近の生々しい告白だけに衝撃は大きい。再選戦略にも影響を及ぼすに違いない。

 回顧録によると、トランプ氏は昨年6月に中国の習近平国家主席との首脳会談で、米国産の農産品購入による自身の大統領再選支援を「懇願」したという。強調する対中強硬姿勢とは程遠く、「再選第一」の印象を否めない。

 米朝首脳会談にも触れ、非核化に関心を示さず、選挙とメディア映えだけを気にするトランプ氏に手厳しい。香港の民主化運動などに「関わりたくない」と側近に語って人権問題より米中貿易交渉を優先させたとも批判している。

 日本や安倍晋三首相に関する記述も多い。その一つが日米同盟の信頼関係に波紋を呼ぶ暴露だ。

 ボルトン氏は昨年7月に訪日した際、トランプ氏が在日米軍の駐留経費負担として、現行の4倍以上の年間約8500億円を求めていると日本側に伝えたと詳述。トランプ氏が安倍氏に米国の日本への防衛義務は「公平ではない」と不満を伝えていたとも証言した。

 さらに在日米軍を撤収させると脅して交渉を優位に進めるよう指示を受けたことも明らかにした。トランプ氏にとって、日米安保も巨額の金を引き出すディール(取引)の材料にすぎないのだろうか。

 日本政府は、米国側の増額要求を完全否定する。しかし、当時の米政府当事者が初めて公に認めたとも言える。看過できない。

 暴露が事実ならば、トランプ氏が国際社会の秩序や国益、同盟国との信頼より、自らの再選を優先していた証左だ。トランプ政権に追従一辺倒の、安倍政権の外交の在り方は見直す必要がある。