小さな子が粘土で作ったような狛犬(阿形 江戸時代・17世紀 愛知県陶磁美術館)など、素朴な作品が並ぶ会場

小さな子が粘土で作ったような狛犬(阿形 江戸時代・17世紀 愛知県陶磁美術館)など、素朴な作品が並ぶ会場

 古代の埴輪(はにわ)、中世の絵巻、近世の文人画など「一生懸命作ったんやろけど…」という作品の数々。龍谷ミュージアム(京都市下京区)の特別展「日本の素朴絵」は、サブタイトル「ゆるい、かわいい、たのしい美術」の通り、ふにゃふにゃした愛らしいものが並ぶ。

 「素朴絵」は、本展を監修した矢島新・跡見学園女子大教授の造語だ。正統派ではないが、おおらかで素朴な魅力の作品を指す。そうした作品も「よろしいなあ」と認めて残してきた土壌が日本にはあるようだ。

 例えば(と例に挙げては申し訳ない気もするが)、18世紀に描かれた表千家八代千宗左の「虎図」。題名がなければ何の動物かまるで分からない素朴ぶりだが、紀州徳川家藩主の御前で試しがきをした後、持ち帰ったものを人に求められて与えたという。

 「なんとお見事な。頂いても?」「こんなものでいいのですか? では」といったやりとりが交わされたのだろうか。こんな賛も入れている。「下手で恥ずかしいのですが」と言いながら、うれしく筆をとったのかもしれない。温かな場面が想像される。

 「絵入本 かるかや」「つきしま絵巻」や各種神像などいずれも、何かを表現しようとした作り手のいちずさと、それを大切に残してきた人々の心が感じられ、かわいさを超えて貴くさえ見える。

 近年、美術界ではこれら素朴な作品が注目される一方、驚くほど精巧な工芸作品などの「超絶技巧」も人気を呼んだ。著名作家ではない作り手の頑張りが、現代人の心を動かすのかもしれない。