事前放流とは

事前放流とは

西日本豪雨で異常洪水時防災操作を実施した日吉ダム。事前放流で水害リスクの低減が期待される(2018年7月6日、南丹市日吉町)

西日本豪雨で異常洪水時防災操作を実施した日吉ダム。事前放流で水害リスクの低減が期待される(2018年7月6日、南丹市日吉町)

 大雨に備え、ダムの水位をあらかじめ下げて貯水できる容量を増やす「事前放流」の動きが全国に広まっている。京都・滋賀では19カ所のダムが対象で、浸水被害に悩まされてきた下流域の住民から歓迎の声も上がる。一方で、放流を判断する根拠となる降雨予測は難しく、農業用など治水向けではないダムをどのように有効活用するかという課題も残っている。

 日吉ダム(京都府南丹市)から桂川を下って約5キロにある同市園部町船岡の集落。西日本豪雨が発生した2018年7月6日、民家のそばを流れる川の水位が堤防の高さぎりぎりまで迫り、住民は近くの元小学校へ避難した。

 ダムは数日前から降り出した大雨に伴って水位が上昇し、ダム湖への流入量と同じ量を緊急に放流する「異常洪水時防災操作」を初めて実施した。非常用ゲートを開放し、放流量は通常の6倍の最大毎秒907トンに達した。住民の男性(68)は「自宅と川の水位が同じくらいの高さとなり、水が迫って来るのでないかと危機感があった」と振り返る。

 今年5月末、日吉ダムを含む淀川水系の利水関係者や自治体などが治水協定を交わし、ダム近辺で大雨が予測される場合、事前放流が可能になった。日吉ダムでは、最大1千万立方メートルを1日半前から放流し、ダム湖の水位を下げられるようにした。

 ダムを管理する水資源機構の担当者は「洪水前にダム湖の空き容量ができる分、避難する時間を確保できる」と話す。下流域の浸水被害の軽減も見込め、男性は「水害自体はなくならないだろうが、一歩前進した」と期待する。

 昨年の台風19号では各地で緊急放流が相次いだ。西日本豪雨でも愛媛県のダムが緊急放流し、下流域に浸水被害が発生したことは記憶に新しい。政府は既存ダムの有効活用を打ち出し、事前放流の運用を促している。今月上旬までに全国99水系で事前放流に向けた協定が結ばれ、京都府では淀川水系の4カ所、由良川水系の5カ所、滋賀県では淀川水系の10カ所のダムで取り組むことになった。