「歯並びの矯正はどうして医療保険が適用されず、高額なのか」

「歯並びの矯正はどうして医療保険が適用されず、高額なのか」

 「歯並びの矯正はどうして医療保険が適用されず、高額なのか」。2人の子を持つ母親から、京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」に、無料通信アプリのLINEを通じてそんな疑問が寄せられた。歯科矯正は、厚生労働相が指定した疾患によるかみ合わせの不具合などの例外を除き、全額が自己負担となっている。なぜ、そうなのか。歯並びが悪いままでいると健康上の問題はないのだろうか。取材を進めた。

■矯正費用27万円「共働きでもきつい」

 情報を寄せた京都府在住の40代女性に話を聞いた。

 小学3年の長男(9)は前歯の並び方が前後にいびつで、学校の歯科検診でも矯正を勧められたため、地元の歯科医を受診した。まず検査料で6万円余りを負担。その後、矯正の費用として27万円を提示された。

 女性自身もかみ合わせが悪く、顎(がく)関節症であごの関節部の痛みに悩まされたため、長男の歯は矯正するつもりでいる。しかし、6歳の次男も歯並びが良くないため、再び高額の支出が必要になる可能性が高いという。

 女性は「うちは共働きだけど、それでも厳しい。医療費控除もあるが、お金はちょっとしか返ってこない。お金がないので、子どもの歯科矯正はしなかったという知人もいた。そうした人は少なくないのではないか」と表情を曇らせた。

 京都府歯科医師会によると、歯科矯正の費用は、歯が生え替わりきっていない子どもで処置が難しいケースでは40万円以上かかることもある。大人の場合は100万円以上かかることもざらにあるという。

■美容と治療の線引き難しく

 医療保険を所管する厚生労働省の医療課に、歯科矯正が保険適用にならない理由を尋ねた。担当者は「公的医療保険は、疾病や負傷に伴う療養に給付するもの。歯科矯正は見た目などの審美的な要素も含まれるので、原則として適用外にしている」と説明する。

 歯科矯正は、歯並びやかみ合わせに問題のない人が、口元をきれいに見せるために行う場合もある。そうした美容目的と治療との線引きが難しいため、歯科矯正に保険を適用する症例は限定しているという。難病など53種類の疾患や永久歯が3本以上生えてこないことに起因するかみ合わせの異常、がく変形症の手術がそれに当たる。

 また、同課は、医療費の膨張で保険財政が厳しさを増していることも、保険適用外にしている理由に挙げた。一方で、歯科矯正に保険を適用した場合の費用を試算したデータはないという。同課は「今後どうしていくかは、関係学会の意見も踏まえて検討していく余地がある」と話す。

■保険適用求める活動も 

 公的な医療保険を適用されない歯科矯正は、自由診療となるため、費用が高額になりやすい。だからといって処置を行わず歯並びが悪いままでいると、虫歯だけでなく、さまざまな重い病気を引き起こす原因にもなり得る。欧州には子どもの歯科矯正に保険を適用している国もあることから、日本もそうすべきという意見もある。

 山梨県では、子を持つ女性や県保険医協会が「保険適用拡大を願う会」を立ち上げ、県内の市町村議会に子どもの歯科矯正への保険適用を求める意見書の採択を請願したり、市民の署名を集めたりしている。意見書は既に県内の11市町村議会が採択。署名は今年5月に国会に提出することを目標にしている。

 同会によると、ドイツや英国は18歳、フランスは16歳までに歯科矯正を行うと、医療保険が適用される。メンバーで県保険医協会の伊藤龍吾事務局長は「日本でもせめて、学校の歯科検診で矯正の必要性を指摘された子どもの場合は、医療保険を適用すべきだろう」と訴える。

 京都でも昨年5月、府歯科保険医協会や女性団体などが、歯科医療への保険適用拡大を目指す「『保険で良い歯科医療を』京都連絡会」を発足させた。子どもの矯正歯科も取り組みの一つに掲げており、「保険適用拡大を願う会」の署名集めにも協力する。

 自身も歯科医の秋山和雄・代表世話人は「学校の歯科検診では、虫歯や歯並びで治療が必要な場合は勧告書を出しているのに、一方は保険を適用し、もう一方は適用外にしているのは大きな矛盾だ」と指摘。「生活習慣病は予防が大事といわれるように、子どもの歯科矯正も同じ観点に立って保険を適用すべき。お母さん方の要望も強い」と強調する。

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