入試の公平性を担保できないまま強行することは避けねばならない。

 2020年度からの「大学入学共通テスト」に導入される英語の民間検定試験のことだ。

 文部科学省は9月末の集計で、全国の四年制大学483校が初年度に利用を予定していると発表した。

 全体の63・6%で、短期大を含めると利用予定は半数程度にとどまる。参加する民間試験の多くで詳細が明らかになっておらず、利用するかどうか決めかねている大学もある。

 来年4月の民間試験スタートまで半年を切るのに、いまだ全体像が見えないのは異常な事態だ。これ以上、受験生たちに不安と混乱を押しつけるべきではない。

 文科省の集計は、少なくとも一つの学部や学科で利用する大学を「利用予定」に数えている。利用の仕方も、一般入試への加点もあれば一部の出願資格のみに使うのもあり、広範な活用とは言い難い。準備の遅れへの大学側の不信感が表れていると言えよう。

 英語の民間試験は「読む・聞く・書く・話す」の4技能を測るのが目的で、大学入試改革の「目玉」だ。だが、民間試験団体と費用負担などの協議が難航し、6団体7種類の試験の参加協定がそろうのが9月中旬までずれ込んだ。

 試験の日程や場所に未確定が多く、受験生に「どの試験がいいか選べない」との声が渦巻いている。大学側も円滑に試験が行われるか不安視し、当初方針を変更して利用をやめる動きが出ている。

 民間試験を巡っては、試験会場が都市部に偏ったり、受験料が高額になったりする地域格差や経済格差への懸念が根強い。先月には全国高等学校長協会が実施延期を求める要望書を提出している。

 だが、文科省は有効な対策を示さないばかりか、萩生田光一文科相は「初年度は精度向上期間だ」と発言した。

 先月の就任会見で「受験生が実験台になるような制度であってはならない」としていたのは何だったのか。受験生らから抗議を受けてもなお、「準備している大学でスタートしたい」と予定通りの実施姿勢を続けている。

 民間試験の準備を進めてきた生徒をはじめ、予定変更にも混乱が伴うのは避けられないだろう。

 受験生の人生を左右しかねない入試である。その公平性と公正さへの信頼が何よりも大切ではないか。今のままでは「見切り発車」である。