6月22日 ツバメ
 
ツバメは春の季語ですが、ツバメの子は夏。えさにぱくぱく、全身が口のような子たちや、もう巣からはみだすほど大きいのにまだ居座る姿とか、いつ見てもおかしい。愛される鳥です。いつか私の家の軒にも…と願ったままいまだかなわず。知り合いの「またうちに来たわ」「汚れるから困る」なんて言葉が自慢げに聞こえるのは私だけ? 「あそこの電線にあれ燕(つばめ)がドレミハソラシドよ」というのは三好達治の詩「燕」。

6月23日 シジュウカラ
 
毎朝早くから「ツーピー、ツーピー!」なる大声に起こされる。迷惑だね、あれは誰? そっと外へ出てみると、庭のカエデに小さな影が。黒い帽子、白い胸には黒ネクタイ…シジュウカラだったのか。自分の体より大きい声です。恋人募集中? あんまりかわいいので、子どもも起こしました(迷惑?)。巣箱にもなじみやすい鳥だそう。「まづ来たと竹にしらせて四十雀(しじゅうから)」。京生まれ、江戸期の俳人、浪化(ろうか)の楽しい一句です。

6月24日 ヤマガラ
 
ひいきの鳥は? と聞かれたら「ヤマガラ」と即答します。黒白灰のモノトーンに奥ゆかしき赤褐色という美しさ。頭がよく、かつては縁日でおみくじ引きの芸もした。子どもの頃に見た記憶がおぼろにあります。「籠のうちもなほうらやまし山雀(やまがら)の身のほど隠す夕顔の宿」(寂蓮)。シジュウカラ、コガラなどの「カラ仲間」中、詩歌史に最も早く現れるそう。人里近い山林に住み、個体数は激減中。出会う機会が減ってきて寂しい。

6月25日 シラサギ
 
水辺で結構出会えるシラサギたち。羽毛が白いサギの総称で、ダイサギ、チュウサギ、コサギなど各種います。「夕立の雲間の日影晴れそめて山のこなたを渡る白鷺(しらさぎ)」という藤原定家の和歌が有名ですが、私の場合、優美さをめでる前につい口ずさんでしまうのが「白鷺三味線」。松竹京都で活躍した時代劇俳優、高田浩吉の小粋な歌。散歩中口ずさむと子どもにいぶかしがられる。「わたしとおまえはエーそれそれ そじゃないか♪」

6月26日 アオサギ
 
故桂枝雀師匠お得意の落語「鷺(さぎ)とり」は、捕りすぎた男が池から大阪・四天王寺五重塔の上にまで飛ぶという雄大なファンタジー、ほら話です。それが何サギかは不明ですが、細首で何羽もと考えればシラサギかな? でもこれがもしアオサギならなあ! 4羽でいけそう…なんて思うほど大きな体です。そしてぼおっとした立ち姿、鈍重な動きは隙だらけで、私でも捕れそうだ。怖いけど。「夕風や水青鷺の脛(はぎ)をうつ」(蕪村)。

6月27日 カワセミ
 
案内板に書かれているものの、いまだに鴨川でカワセミには出会えていません。宝石の翡翠(ひすい)と同じ漢字の美しい小鳥。最初に知ったのは宮沢賢治の童話「やまなし」。「青びかりのまるでぎらぎらする鉄砲弾(だま)のやうなものが、いきなり飛(とび)込んで来ました」。カニの兄弟とともに子どもの私も鮮烈な描写にびっくりしたものです。一直線の急降下は一度だけ渓流で見た。夏の谷川が似合うのです。もっと上流を探索してみよう。

6月28日 カイツブリ
 
「漣(さざなみ)清き鳰(にお)の海♪」は甲子園で時折聴ける八商こと近江八幡市の八幡商業高の校歌の歌い出しです。鳰とはカイツブリ、鳰の海とは琵琶湖の異称で、滋賀の県鳥。季語では冬鳥ですが、通年見られます。長く潜るので息長鳥(しながどり)とも。「かいつぶり思はぬ方に浮(うき)て出る」(正岡子規)。浮上後の平然、キョトンとした顔がおかしい。しかし東京のとある展示水槽で私が見た個体は、水中では必死の泳ぎでした。魚捕りは意外と下手だった。

 

~ぼくの軒に~

 

<文 澤田康彦 絵・題字 小池アミイゴ>

 妻とスーパーの駐車場を降りたら、天井から「ヂューヂュー」「ヂュッ」「ヂュー」という大騒ぎが聞こえたので、2人同時に「あ」と叫んできょろきょろ。いましたいました。小さな巣から顔を三つ出した子ツバメです。ちょうど餌が届けられた直後らしい。大きなくちばしは白くて、ゆうべ食べた琵琶湖の稚アユの口に似ているなあ。うちの子と同じで、おなかが減ったときは、やいやい要求するね。ツバメの親って大変だ。いや、うちもこれから食料の買い出しだから状況は全く同じ。

 そんなことを言い合いつつじっと観察していたら、近くで親鳥が1羽、心配そうに見ています。「なんか悪いから行こ」と妻。

 ああ、そんな季節です。先日の1面コラムにも書きましたが、いつかわが家の軒にもと願っています。鴨川もあんなに飛んでいるのにな。サギやカモを横目に橋から橋へさあっと通り抜ける、気持ちよさそうな飛行です。

 それを見て思いついた。息子にツバメ飛行機を教えてやろう。彼がコピー用紙の裏紙で最近次々製造する紙飛行機があまりにも代わり映えしないので。

 おいよく見ろ、ここをこう折って、ここを切って…昔を思い出し思い出し完成(手が覚えていた)。うまく飛ぶかな? 見てろ、えいっ。家族の前で投げたら、ピューン! 自分でもびっくりするくらい、本当にツバメのごとくスマートに飛びました。家で珍しく尊敬のまなざしを得た一瞬でした。

 この鳥をこんなに好ましく思えるのはなぜでしょう。銅像の王子のために身をささげた「幸福の王子」のツバメや、不運な親指姫を南の国につれていった爽やかなツバメ。あるいは漫画「がんばれ!!タブチくん!!」の応援団長オカダさん=ヤクルトスワローズの存在もあるかな?(なかなか勝てないのだ)。

 カラス、スズメと並ぶ、最もポピュラーな鳥ですが、違うのは渡り鳥という点でしょう。春に南から来て、秋に南へ帰る。コンニチハとサヨウナラのある生き物。不在が寂しく、再来がうれしい。

 「やがてお前の知らない夏の日がまた帰って 僕(ぼく)は訪ねて行くだらう お前の夢へ 僕の軒へ」(立原道造「燕(つばめ)の歌」)

 来年はわが家に?

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澤田康彦 さわだ・やすひこ 1957年生まれ。編集者・エッセイスト
小池アミイゴ こいけ・あみいご 1962年生まれ。イラストレーター