新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言の解除から1カ月が過ぎた。一時は人の姿が消えた京都市内の観光地にもにぎわいが戻ってきた。

 だが外国人客はほとんどいない。観光庁によると、訪日外国人は4月に3千人を割り込み、5月は1700人と推計される。

 長い京都の歴史でも、数カ月でまちの姿がこれほど激変した経験はまれではないか。

 市が発表した2019年の観光総合調査は、7年連続で観光客数が5千万人を突破するなど人気の高さを裏付けた。現在とは隔世の感がある。

 窮地に陥った事業者などへの支援策が求められる。同時に京都観光の在り方を一から考え直し、立て直す契機にしたい。

 2月に行われた市長選は、訪日観光客の増加が市民生活を脅かす「観光公害」が大きな争点となった。

 混雑やマナー違反、ホテル建設の急増に伴う地価高騰などが暮らしを脅かし、市民と観光客の分断が深刻化した。

 もう一度あの頃に戻りたいという声は聞かれない。実際のところ、ワクチンや治療薬の開発がなければ、海外旅行の本格的な再開は難しいとみられる。

 当面は国内が中心となる。京都らしく、地に足をつけた観光のかたちを探れないだろうか。

 市が観光産業を重要戦略として打ち出した背景には、和装産業の衰退や、金属機械工業の海外シフトなどがあった。地元経済を押し上げる力として期待がかかった。

 16年に「訪日客4千万人」の目標を立てた政府とも歩調を合わせ、市は宿泊施設を20年までに1万室拡充する方針を掲げた。目標を超えても「富裕層向けのホテルは足りない」と旗を振り続けた。

 年間100万人前後だった外国人宿泊客数は、18年に450万人にまで達した。

 目先の数値にとらわれ、観光の「質」を見失う。それが、ゆがみをもたらしてはいなかっただろうか。

 観光への依存度を強めた結果、コロナによる経済への影響がより深刻化したとも言える。

 市はコロナを踏まえた新たな京都観光を打ち出すため、公衆衛生の専門家を含む庁内のチームを発足させた。まずは国内に向け、具体的な感染防止策などを発信するという。

 過去の政策の何が問題だったか検証し、教訓とすることが欠かせないだろう。

 外国人が目立ったものの京都を訪れる観光客の8割超は日本人だ。近場で観光を楽しむマイクロツーリズムに期待が高まる。過度の集中を避ける分散化など、課題に取り組む必要がある。

 注目されるのは、事業者に足元の市民を大切にする動きが広がっていることだ。

 海外や東京の富裕層を狙っていた飲食店が、足を運んでくれた地元客の大切さに気付き、経営方針を見直す―。こうした変化を大切にしたい。

 京都市には147万人の暮らしがある。地元の人に迷惑がられる観光なんて、だれもしたくないはずだ。観光と市民生活の調和を今度こそ第一にしたい。