甲賀市の信楽高原鉄道信楽駅舎に並ぶ新しいパネルは、1年前に解散した市民団体「鉄道安全推進会議」の四半世紀にわたる活動の軌跡を記している▼なぜ事故を防げなかったのか、鉄道会社は事故を風化させずに継承を―。1991年5月14日に起きた信楽高原鉄道事故の遺族で同会会長として活動に尽力した故臼井和男さん、故吉崎俊三さんの強い思いが伝わってくる▼駆け出しの頃に取材した事故の現場は今も忘れられない。だが、42人が死亡した惨事を知る人は年々減っている。教訓と記憶は今後も受け継がれていくだろうか▼コロナウイルスの感染防止を理由に今年の追悼法要は縮小され、遺族の参列もなかった。それから1カ月余り。県境をまたぐ移動が全面解禁され、信楽にも少しずつにぎわいが戻ってきているようだ▼だがコロナは鉄道会社の経営を直撃している。JR西日本は今年4~6月の運輸収入が前年同期と比べて約7割減になるという。地方の鉄道は特に影響が深刻だ。利用者が減少してサービスの持続さえ危ぶまれる。そんな中で、再び安全への対応が後回しにならないだろうか▼利用客の無事あってこその鉄道である。感染対策と併せ、過去の教訓を改めて胸に刻んでほしい。臼井さん、吉崎さんも、天国から見つめているはずだ。