歌の内面 緻密に描写

「佐竹本三十六歌仙絵 坂上是則」(重要文化財)文化庁蔵=通期展示
「佐竹本三十六歌仙絵 坂上是則」(重要文化財)文化庁蔵=通期展示

「こひしさは 同じこころにあらずとも 今宵の月を きみ見ざらめや」
 月を見て恋人への想いを募らせ、詠み上げた源信明(さねあきら)の一首。佐竹本に描かれている信明は、少しうつむき、力が入っていないのか扇が下を向いている。
 佐竹本は、金泥や銀泥を贅沢に使った色使いもさることながら表情や姿勢など細部に注目すると、歌仙の内面を描き出していることがわかる。衣装に注目すると、風の動きや体の動きまでを推測することができる。
 多くの歌仙絵が繰り返し描かれるが、この緻密さは佐竹本が歌仙絵の最高峰という評価を得る理由の一つだという。
 分割された歌仙絵もその高い価値を受け継いだ。坂上是則(さかのうえのこれのり)の歌仙絵は「みよしのの 山の白雪つもるらし ふる里さむく なりまさりゆく」という冬の情景を詠んだ歌や、どこか寒そうに見える肖像画に合わせ、雪山を背景にした掛け軸に仕立てられている。雪山を描く絵画は、貴重な価値を持つとみられる中世の逸品を切り取ったと推定されている。

「上畳本三十六歌仙絵 藤原仲文」13世紀=通期展示
「上畳本三十六歌仙絵 藤原仲文」13世紀=通期展示
「佐竹本三十六歌仙絵 素性法師」(重要文化財)=通期展示
「佐竹本三十六歌仙絵 素性法師」(重要文化財)=通期展示