ツユクサの一種にとまるホソヒラタアブ=撮影・勝原光希

ツユクサの一種にとまるホソヒラタアブ=撮影・勝原光希

<いきものたちのりくつ 中田兼介>

 この季節、朝に鮮やかな青い花を咲かせるツユクサに、エサを求めてハナアブが飛んで来ます。彼らが花粉を運ぶのでツユクサは種子をつけられます。といってもハナアブには「花を助けてあげよう」という気持ちはないので、エサだけ食べて花粉は運ばない、ということが起きえます。これは花にとっても困りますし、その結果、花の数が減るとハナアブにもダメージです。でも大丈夫。ハナアブはその気がなくてもちゃんと花粉を運びます。

 ツユクサには長さの違う3種類のおしべがあります。繁殖用の花粉のついた長い2本は地味な茶色で、花の正面、下方向に突き出しており、その後には、エサ用の花粉を持つ地味な黄色をした中程度の長さのおしべが1本と、そのまた後ろに、花粉を持たないけれど黄色で目立つ短いおしべが3本あります。この配置が、ハナアブがつい花粉を運んでしまう仕組みです。

 ハナアブは、目立つ短いおしべを目標に花に近づきます。正面から飛んでくれば、手前にある中くらいの長さのおしべに花粉があるのを見つけ、食べようと花にとまります。するとちょうどおなかの部分が長いおしべの近くに来て、花粉が体につくのです。横から短いおしべに近づいても、エサがないので食い逃げは起こらず、ハナアブは試行錯誤するうち正面から接近し花粉を運ぶことになります。

 そういえば、最近の高速道路のトンネルには、車が進む方向に次々と点灯するライトがついているものがあります。運転手はついライトの動きに合わせて車を走らせるので、当人にはその気がないのに、速度低下による渋滞が起こりにくくなるのだそうです。知らぬ間に操られているのかと思うと微妙な気持ちになりますが、ハナアブのように周りに恩恵を施しているのなら、気も休まろうというものです。(京都女子大教授)

◆中田兼介 なかた・けんすけ 1967年大阪府生まれ。京都大大学院で博士号取得。著書に「クモのイト」「びっくり!おどろき!動物まるごと大図鑑」など。「図解 なんかへんな生きもの」を監修。