去年の夏の終わりに京都から東京に引っ越してきた。新しい街は23区内からは少し離れた郊外の静かなベッドタウンで、大きな川と丘に囲まれている。

 高校を卒業するまで暮らしていた石川県の小さな町にも9年間暮らした京都の街にも大きな川があった。どこか寂しい雰囲気の遊園地のそばを流れる大きな手取川の上を走るバイパスも、出町柳駅からミスタードーナツへと渡る橋や三条大橋、大学時代に住んでいたアパートからカナートに向かう途中の橋も、どれもその街での生活を思い出すときに必ず浮かび上がってくる風景だ。

 橋を渡る生活はどこか風通しがよくて気持ちがいい。今住んでいる部屋も最寄り駅から川を挟んだ場所にあって、スーパーや図書館、歯医者なんかに行くために毎日のように大きな橋を自転車で渡っていく。橋から見る景色は時間帯や季節をよく映している。去年の秋の台風でめちゃくちゃになってしまった川沿いの公園も夏が近づくにつれて元の姿をとりもどしてきた。橋の上からは電車が川を渡るのが見える。その瞬間がたまらなく好きだ。

 石川にも京都にもこの街にも、その街にしかない景色があって、どこにいっても忘れないのだろう。