旧優生保護法下で不妊手術を強制されたとして、東京都の男性が国に3千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は請求を棄却した。

 強制不妊手術を「憲法で保護された自由を侵害」「正当化の余地のない違法な行為」と断じながら、不法行為に対する損害賠償請求権が20年で消滅する「除斥期間」を適用した。

 男性は1957年に手術を受けた。国の法律に基づく手術でありながら内容も知らされず、記録も残っていなかった。

 手術内容を把握した後も、差別や偏見を恐れ、家族にすら打ち明けられなかった。

 判決は除斥期間の起算点を手術の時点とし、遅らせたとしても「96年の旧法改正時点で提訴が可能だった」と判断した。

 除斥期間規定を適用しないことが認められたケースはほとんどないというが、そもそも国策による被害に一律に適用することが妥当なのか疑問が残る。

 提訴できなかった被害者の実情が反映されていない。子どもを生み育てるかどうかを決める権利を奪われた無念さに寄り添った判断とはいえない。

 手術を受けた男女24人が全国8地裁に起こした一連の裁判で、判決は2件目になる。昨年5月の仙台地裁判決も同様に原告が敗訴しており、司法による救済の壁の高さを印象づけた。

 仙台地裁判決は旧法自体は違憲としているが、違憲性に言及しなかった今回の判決はそれよりも後退している。

 国会の責任についても、補償などの被害回復措置を取る立法が必要不可欠だったとは言えないと、原告の訴えを退けた。

 立法や行政の逸脱や怠慢をチェックする司法の役割を果たしているとは言いがたい。

 昨年施行された救済法は一律320万円の給付を定めたが、不十分だと批判されている。

 支給も進んでいない。被害者の多くは手術されたことさえ認識しておらず、全国被害弁護団は法改正による運用改善や検証を求めた。

 衆参両院の事務局は6月、支給法に基づき、人権侵害を容認してきた旧優生保護法の立法経緯や被害状況の調査を開始した。だが制定から70年以上が経過し、検証の難航も予想される。

 このままでは真の救済は遠いと言わざるを得ない。国も司法も、改めて被害者の実態に真摯(しんし)に向き合うべきだ。