実直な職人とひょうひょうとした哲学者。長く日展京都の日本画壇を背負った故中路融人さんと故岩倉寿さんは画風も雰囲気も対照的だったが、作品に描かれる自然には不思議と響き合うものがある▼母が東近江出身だった中路さんは幼いころから湖国の風景に親しみ、伊吹山や田園を叙情性豊かに手掛けた。何度も現地へ足を運び、心に響く場所を見つけては、じっくり景色と対話しながら写生した▼一方の岩倉さんは洛北・修学院で、身近な自然と静かに向き合った。淡い色彩と形が交錯する抽象的な画面は、そこにあるものの存在、ありように迫った▼2017、18年に相次いで鬼籍に入った2人とその師山口華楊の3人展が愛知・名都美術館で26日まで開かれている。3人の絵は対象を徹底的に見つめ、風景や生命の形の正確さでなく、その奥にある本質を描きだしている▼モチーフや技法は異なっても通じるのは、華楊が主宰した日本画研究会でともに研さんしたからだろう。「ただ細かく見るのではなく、よく見ることが大切である」。円山応挙以来の京都画壇が重視する写生の精神を学んだ▼近年、災害や疫病など自然の大きな力の前に立ち尽くすことが増えている。自然を畏敬し、自然に寄り添い、対話を重ねる。そんな自然観に学ぶことは多い。