たわわになったホップと摘み取り作業をするホップレンジャー(京都府与謝野町滝)

たわわになったホップと摘み取り作業をするホップレンジャー(京都府与謝野町滝)

 夏と言えばビール。近年ちまたでは個性豊かなクラフトビールが人気を集めている。ビールに香りや苦みといったキャラクターを与えるのが原材料の「ホップ」だ。国内では北海道や東北が主産地だが、新たに京都府与謝野町でも栽培が進み、町は地域活性化や交流人口の増加を期待している。

 梅雨の晴れ間が広がった6月下旬、町南部のホップ畑に年間を通じて生産者とともに汗をかくサポーター「与謝野ホップレンジャー」4人が集まった。鈴なりになった黄緑色のホップを一つずつ手作業で摘み取っていく。作業場に戻った後は袋詰めだ。手にしみた、ホップの柑橘(かんきつ)系の香りがビール好きにはたまらない。兵庫県小野市の会社員男性(45)は「生ホップに触れる機会なんてなかなか無い。ビール好きが最後にたどり着く場所だと思う」と笑顔を見せた。

 ホップは主にアメリカ品種と欧州品種がある。町内では「カスケード」や「コロンバス」といったアメリカ品種を中心に栽培している。真空冷凍で出荷、フレッシュなまま、クラフトビールメーカーに届ける。

 与謝野町でホップ栽培が始まったのは2015年。町が新たなブランド産品を開発する一環で支援してきた。国際的品評会の審査員などで活躍し、自身も町内でホップを栽培する、日本ビアジャーナリスト協会代表の藤原ヒロユキさん(61)によると、国内産ホップのほとんどが大手ビールメーカーとの契約栽培で、クラフトビールメーカーは自社で栽培する以外に国内産を手にすることはできなかった。輸入ホップは乾燥で、フレッシュなものは貴重だった。

 生産は京都与謝野ホップ生産者組合の組合員が行っているが、最初は「分からないことだらけ」だった。農業法人「あっぷるふぁーむ」代表取締役の山本雅己さん(57)は「他の果実や野菜とも栽培方法が異なる上、情報が少なかった」と振り返る。専門家の指導や東北への視察で、春に株を掘り起こす「株開き」や、「株ごしらえ」などを一から学んだ。

 現在は、全国10社以上のクラフトビールメーカーが町内産のホップを使っている。これまでに4回使った京都醸造(京都市南区)は、クラフトビールの名前に「与謝野」の名前を入れてきた常連だ。キリンビールの子会社が運営する「スプリングバレーブルワリー京都」(中京区)は、通年で与謝野のホップを使ったクラフトビールを販売しており、3日から天然酵母を使った新作を提供する。町内では17年から毎夏、生産者組合の企画で、茨城県のメーカーに委託して製造した、町内限定クラフトビールが酒販店で販売されてきた。

 町は昨年11月、内閣府にビール醸造の規制を撤廃する特区の設置を申請した。12月には藤原さんを代表に「京都与謝野酒造」が設立された。町内限定クラフトビールのOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受け、自社で全国の小売業者や飲食店に販売する予定だ。藤原さんは「与謝野の名前を全国区にし、ゆくゆくは町内に自前の醸造所を開設したい。町出身の人の誇りになればうれしい」と意気込んだ。