ロシア憲法の改正案が全国投票で賛成多数を獲得し承認された。2024年に任期が切れるプーチン大統領が最長36年まで続投できる道が開かれた。

 実質20年間、政権トップに君臨するプーチン氏は、5選出馬に言及している。大統領の座を去っても実権を手放さず、「院政」を敷くとの見方も根強い。

 プーチン氏は対外的に強硬で権威主義的な姿勢を示してきた。それがますます強まり、欧米との対立が激化しないか懸念される。

 権力に固執しないよう、自制を求めたい。あまりにも長期間、支配を継続すると、社会の停滞を招く危険性がある。

 ソ連崩壊後に混乱した国内を立て直したプーチン氏に実績があるのは事実だろう。だが既に「プーチン時代」は長すぎる。

 長期政権疲れや経済格差の固定化などにより、国民の失望は広がっている。支持率は低下傾向にあり、60%とはいえ過去20年で最低水準となっている。

 コロナ禍が収まらない中で投票実施に踏み切ったのは、経済や生活の悪化で国民の不満がさらに高まるのを恐れた政権の思惑があったからだ。

 投票に至る手続きや、多くの改憲項目を抱き合わせにして賛否を問う設問にも批判があった。

 政権は、年金や社会保障費の物価変動に応じた改定など耳当たりの良い内容を繰り返し宣伝したが、長期続投を可能にする条項には触れなかった。

 事実上の終身大統領制の導入ともみられる改憲だが、これで長期支配が「お墨付き」を得たとはいえないだろう。

 エリツィン政権下で1993年に採択された憲法は、206カ所の修正を加えられた。排外主義や同性婚の否定など保守的な価値観を随所に盛り込み、「プーチン憲法」の様相である。

 国際条約に基づく国際機関の決定がロシア憲法と矛盾する場合は無効にすると規定した。

 2014年にウクライナ南部クリミア半島を制圧し、国際的に批判を浴びた。そうした圧力を排除する姿勢を強めている。

 日本にとって特に気がかりなのは、領土割譲の禁止条項が盛り込まれたことだ。

 国境画定作業は禁止の対象外とされたが、北方領土の返還反対派は勢いづいている。

 領土交渉が不透明さを増すのは避けられないだろう。日本はロシアに真意をただす必要がある。