あふれた濁流が市街地に押し寄せ、崩れた土砂が人家をのみこんだ。またも、犠牲が繰り返されることに痛恨の思いを禁じ得ない。

 停滞する梅雨前線の影響で、九州を中心に豪雨に見舞われた。熊本、鹿児島両県の自治体に初の大雨特別警報が発令され、合わせて11市町村の約20万人に避難指示が出された。

 熊本県内で最大河川の球磨川が広い範囲で氾濫した。住宅街や老人ホームが水没したり、裏山が崩れて家屋が埋まったりする被害が相次ぎ、多くの死傷者や行方不明者が出ている。

 浸水した家屋などに取り残された住民や、道路被害で孤立状態になった地域も助けを求めている。被害の全容把握を急ぐと同時に、逃げ遅れや行方不明者の捜索と救助、被災者の救援に全力で当たりたい。

 今後も停滞する前線と低気圧に温かく湿った空気が流れ込み、5日にかけ西日本を中心に大雨の恐れがある。既に大雨で緩んだ地盤は崩れやすくなっており、二次災害の危険を含め厳重な警戒を怠ってはならない。

 大きな被害をもたらしたのは猛烈な雨だ。熊本県天草市では観測史上1位の1時間に98ミリに達し、総雨量で500ミリを超えた地点もある。

 気象庁のレーダー観測で、長時間にわたり次々と積乱雲がかかる「線状降水帯」のような強い降水域が確認されたという。

 台風以外でも、甚大な降雨被害を起こす線状降水帯の怖さを突き付けたのが、2018年7月の西日本豪雨だった。最初の大雨特別警報が出されてから6日で丸2年になる。

 岡山、広島、愛媛を中心に14府県で関連死を含めた犠牲者は290人を超え、京都、滋賀でも土砂崩れに巻き込まれるなどして6人が亡くなった。

 頻発する集中豪雨や台風の大型化には、地球温暖化で大気中の水蒸気が増えている影響が指摘されている。東日本を襲った昨秋の台風19号はじめ、風雨の観測記録が年々更新される状況にある。

 かつて経験したことのない災害から大切な命を守るには、新たな被害の教訓や科学的知見を取り入れ、備えや行動に生かしていく必要がある。

 西日本豪雨では、災害の危険性が住民にうまく伝わらなかった苦い経験を踏まえ、気象庁は昨年5月から切迫度を5段階の警戒レベルで伝え始めた。夜間に移動する危険性を考慮し、早めに避難情報を出し、屋内での安全確保も選択肢とする呼び掛けの見直しも進んだ。

 重要なのは、住民自身がハザードマップなどで地域の災害リスクを把握し、対応策を確認しておくことだ。高齢者らの支援方法を含め、雨量や川の水位などを目安に起こす避難行動を時系列にした「タイムライン」を住民間で定め、訓練を重ねて備えたい。

 避難所で新型コロナウイルス感染拡大を防ぐ対策も求められている。「3密」にならぬよう増設や間仕切り設置、ホテルや近親者宅の活用が必要という。

 要員や財政面でも負担増となる。自治体任せでなく国による十分な支援が欠かせない。