平家物語編さんの謎に迫った著書を手にする赤井さん(京都府福知山市上天津)

平家物語編さんの謎に迫った著書を手にする赤井さん(京都府福知山市上天津)

 平家一門の興亡を描いた作者不詳の古典文学「平家物語」の成立の謎に、京都府福知山市上天津の赤井信吾さん(75)が著書「高僧慈円の思想と創造力」で迫った。天台宗の僧侶、慈円(1155~1225年)を、遺作との共通点を綿密に検証した結果、平家物語の編さんに中心的に関わった人物として浮かび上がらせた。

 元中学校校長の赤井さんは退職後、地域史の研究を開始。2009年、平家物語の一節「鵺(ぬえ)退治」に由来すると伝わる地元の地名「勅使」の謎に迫った本を書き上げた。以降は平家物語をテーマとし、15年に出版した「慈円と鵺」では鵺退治を手掛かりに、慈円が平家物語の編さんに関わったとする説を提起した。

 物語の作者については、「徒然草」(14世紀前半、吉田兼好作)の記述を根拠に、信濃前司行長(しなののぜんじゆきなが)を作者とする説が有力だが、赤井さんは行長の身分や権限に限界があるとして、その説を疑問視する。今回の著書では、鎌倉初期に天台座主などを務めた大物で、行長を保護していた慈円を編さん責任者とする仮説の下、平家物語を網羅的に検証した。

 各章では、平家物語と慈円が書いた歴史書「愚管抄(ぐかんしょう)」などを比較。作中の和歌や細かな筆致、思想など両作の共通点を明らかにした。慈円の生涯や社会的背景も照らし合わせ、慈円が語りや詩に秀でた僧らを集めた編集チームを組織し、天台宗の教えを広げる説教師の教本として、平家物語を作ったと結論付けた。

 赤井さんは、「壮大な平家の歴史を、格調高く面白い軍記物語にまとめ上げた慈円のエネルギーに感服した。平家物語の研究が深まればうれしい」と話す。

 ルネッサンス・アイ刊、1620円。450ページ。書店で販売している。