朝に出会った際、すれ違った時、別れ際、いかなる場面でも通用する「万能あいさつ」は重宝される。「ご安全に」がそう。工場や建設現場を中心に鉄道や電力などインフラを支える職場で頻繁に交わされる▼昭和20年代に住友金属工業(現・日本製鉄)の技術者が留学先のドイツの鉱山で使われていたあいさつを持ち帰ったのがルーツと伝わる。社内の安全運動が全国に広まった好例だ。同社によると、社内では電話の「もしもし」も「ご安全に」が使われているという▼「安全第一」の標語も企業が発祥だ。1912年、米国の鉄鋼大手の社長が「生産、品質、安全」の順だった経営方針を「安全第一、品質第二、生産第三」と並び替えた▼その効果もあって、労働災害が減っただけでなく、品質が向上し生産も増えたという。スローガンとして全米に広がり、日本でも定着した▼ウイルス感染や自然災害から身を守ることが第一のご時世。そんな折だからこそ、安全メッセージは業界の垣根を越えて共感されるのではないか▼コロナ禍で朝礼を中止している職場もあるが、リーダーの締めの言葉「今日も一日、ご安全に!」に対し、全員で「ご安全に」と唱和するのがこれまでの定番。マスク姿でもリモートであっても相手の無事を気遣うあいさつは温かい。