昨年の参院選広島選挙区を巡る買収事件で、公選法違反(買収)罪で前法相の河井克行衆院議員と妻の案里参院議員が起訴された。

 広島県議や首長ら延べ108人に計2900万円余りを渡したとされる前代未聞の選挙違反疑惑の解明は今後、法廷の場に移る。

 裁判は起訴から100日以内に結論を出す「百日裁判」で審理される見通しで、有罪が確定すれば夫妻は国会議員を失職する。

 夫妻は買収目的を否認しているといい、公判でも同様の主張するとみられている。

 夫妻とも逮捕前、疑惑について説明していない。政治家として起訴事実にどう向き合うのか、法廷で真実をしっかり語ってほしい。

 事件では、カネを巡る政治家の倫理が改めて問われた。

 夫妻から現金を受け取ったとされる県議や首長は40人に上り、その半数近くが受領を認めている。すでに首長職を辞した人もいる。

 驚かされるのは現金の授受が極めて安易に行われていたことだ。

 違法な現金であると認識しながら受け取ったケースもあったが、市議選などの「当選祝い」や「ガソリン代」などと解釈して受領していたと告白する人もいた。

 金銭を受け取ることへの倫理的感覚が鈍すぎないだろうか。数十万~数百万円もの金額を手にした議員らもいる。政治に対する住民の信頼を大きく傷つけた。

 検察当局は現金を受け取った議員らの刑事処分を見送る方針だというが、有権者の納得を得られるだろうか。過去には少額の受領で起訴された例もある。処分見送りの理由を示してもらいたい。

 刑事責任を問われなくても、政治家としての道義的責任は免れない。現金を受け取った議員らは、そう肝に銘じてほしい。

 夫妻が配布した現金の出どころについての解明も不可欠だ。参院選前に自民党本部から入金された1億5千万円が買収の資金になったかどうが焦点となっている。

 これに関する党本部の説明は不明確だ。二階俊博幹事長は当初、「広報紙に充てられた」としながら、後に「(使途を)細かく追究していない」と後退させた。

 党として調査はしないとの姿勢を示したようなものだ。だが、入金金額のうち1億2千万円は税金が原資の政党交付金だとされる。使い道について、国民への説明責任があることは言うまでもない。

 党所属国会議員の疑惑に対し、頬かむりしたままでは、政権に対する信頼回復も望めまい。