トランプ米政権が世界保健機関(WHO)から来年7月に脱退すると国連に正式に通告した。

 新型コロナウイルスを巡るWHOの対応が中国寄りだと主張し、5月に脱退を宣言していた。

 コロナ感染の世界的な収束に向け、各国が協調しなければならない局面である。一方的な脱退は、国際社会を混乱させるだけだ。

 通告の撤回を求めたい。

 背景には、秋の大統領選に向け、WHOや中国に矛先を向けることで、自らの初動対応の遅れに対する批判をそらしたいトランプ氏の思惑があると指摘されている。

 WHOはウイルス対策だけでなく、ワクチン普及や緊急医療支援など多岐にわたる活動を行っており、米国はWHO予算の15%を負担する最大の拠出国である。離脱による影響は甚大だ。

 自らの再選を優先し、世界の保健衛生施策に打撃を与えるとすれば、トランプ氏の振る舞いはあまりに身勝手と言わざるを得ない。

 コロナに関し、WHOのテドロス事務局長は当初、感染が拡大していた中国の対応を称賛した。トランプ氏は中国に情報隠しの疑いがあったのに説明をうのみにしていた、と批判していた。

 中国に対してはWHO内部にも不信感がくすぶっていたという。

 だが、世界での感染は拡大しており、感染者は1100万人、死者は54万人を超えている。今は、WHOのもとに結束して対応するのが先決ではないのか。

 WHOは感染症が発生しても調査を強要する権限はなく、各国の情報に頼らざるを得ない。発する指針や勧告にも強制力はない。

 このため、トランプ氏から非難されても敵対的な対応はせず、低姿勢をとってきた。WHO関係者の中には、大統領選で政権が交代し、脱退を撤回する流れになることを期待する向きもあるという。

 国連機関が一国の政治状況に揺さぶられては、中立性が損なわれかねない。

 WHOからの脱退は米国にとってマイナスになる可能性もある。毎年流行する型が異なる季節性インフルエンザについては、米国もWHOが各国から集めた検体情報などの恩恵を受けている。

 米国はコロナの感染者300万人、死者13万人と、いずれも世界最多だ。WHOの知見や情報を最も必要とする立場ではないのか。

 国内の感染者数を抑えようというなら、むしろWHOの運営に積極的に関わるべきだ。脱退は理屈に合わない判断というほかない。