窓から猛煙を上げて燃える第1スタジオ(2019年7月18日午前11時53分、京都市伏見区)

窓から猛煙を上げて燃える第1スタジオ(2019年7月18日午前11時53分、京都市伏見区)

事件発生当日の経過表

事件発生当日の経過表

 36人が犠牲になり、33人が重軽傷を負った昨年7月18日の「京都アニメーション」第1スタジオ(京都市伏見区)の放火殺人事件。国内外で愛されるアニメを生み出してきた建物が炎と煙に覆われ、殺人事件では平成以降最悪の大惨事となった。猛煙に包まれた建物内で社員たちは懸命に脱出を試みた。近隣の人たちは救助に駆けつけ、遺体に接した人たちは失われた命の多さに言葉を失った。京都新聞社のこれまでの取材や独自に入手した資料と、関係者の証言を基に、犯人が火を放ってから全ての犠牲者を運び出すまでの約11時間を再現する。

 この日、京都市内の上空は梅雨前線の雲に覆われていた。新興住宅地の一角にある3階建ての第1スタジオでは、いつも通りに出勤してきた20~60代の男女70人がそれぞれの作業に励んでいた。

■午前10時半ごろ事件発生 「死ね」爆発音

 午前10時半ごろ、正面玄関のドアからいきなり男が入ってきた。男は1階中央付近にあるらせん階段の西側に回ると、「死ね」と叫んでバケツでガソリンをまき、着火用ライターで火を放った。「キャー」という女性社員の叫び声とともに、ドッドッドッという爆発音が響いた。

 午前10時31分40秒、スタジオの近くの防犯カメラがこの火災の最初の記録とみられる映像を撮影していた(経過表1)。1階の窓ガラスが割れ、網戸が外れた。7秒後に1階東側の窓から炎が噴出。揮発性が高いガソリンが使われたことで1階にいた社員は放火直後に爆発的な燃焼に襲われた。

 1階には12人の社員がいた。らせん階段のすぐ横にいた2人は爆発に巻き込まれたとみられ、現場で命を落とした。出火直後に階段で2階に上がり避難を呼び掛けた1人を含む残りの10人は屋外に脱出した。しかし3人は重いやけどを負い、入院先で翌日以降に亡くなった。