京アニ事件の義援金配分委員会の議事資料。義援金を寄せたファンの思いを重視しながら議論を進めていた

京アニ事件の義援金配分委員会の議事資料。義援金を寄せたファンの思いを重視しながら議論を進めていた

 昨年7月に京都アニメーション第1スタジオ(京都市伏見区)が放火され36人が死亡、33人が重軽傷を負った事件で、国内外から集まった33億円超の義援金を被害者に分配するため京都府が設けた配分委員会の議事資料を、京都新聞社が10日までに入手した。委員たちは支給額の基準を作る際、義援金を寄せたファンの思いを重視しながら詳細を決めていたことが分かった。

 配分委は昨年11月以降3回、非公開で開催。府、府医師会、京都弁護士会、日本赤十字社府支部など7団体の8人が委員を務めた。

 議事資料によると、複数の委員が義援金に込められたファンの思いを強調。ある委員は、義援金の振込用紙に添え書きがあり、作品に励まされた経験や社員の一刻も早い復帰への願いが書かれていたと紹介した。

 府はスタジオにいた社員70人のうち唯一けががなかった社員を配分対象から外す案を当初示した。だが委員は、ファンの感謝の思いは同じである上、けががなかった社員も心の傷を負っているとして、対象に含めると決めた。

 基礎見舞金の議論でも、「(義援金は)日本のアニメ界を背負ってきた方々へのお礼と感謝」「亡くなった方も負傷した方も同じく努力してきた」と意見が出され、全員一律とすることを決定した。

 被害者や遺族は非課税とするなど災害義援金の枠組みを援用しつつ、支給対象や配分額の算出では独自の判断をしていた。

 災害義援金は死亡と重傷の2区分しかなく、軽傷者には配分しない。死者と重傷者への配分割合は2対1が通例だ。だが今回は全員に基礎見舞金を一律配分し、その上で、交通事故損害賠償金や労災など複数の制度を参考に、重いやけどの治療で手術や通院が要るケースなどでは重傷者への配分額が死者を上回る例もあるような基準としていた。

 委員は幼子がいるなど個々の状況を慎重に吟味し、計算式をつくっていった。「どれが正しい、間違っているというのはない」と苦心を打ち明ける人もいた。

 2月28日に開かれた最終会議で委員の一人は、未曽有の寄付額をはじめ諸条件が奇跡的に重なって今回の支援が実現すると指摘し、「今後、こういう形での議論は起こりえないだろう」と総括。今回の仕組みが他の事件には適用しにくいことをにじませた。