命の現場での経験を基に作った歌で観客にエールを送る話花場(近江八幡市・近江八幡駅前)

命の現場での経験を基に作った歌で観客にエールを送る話花場(近江八幡市・近江八幡駅前)

 高校時代から滋賀県近江八幡市のJR近江八幡駅前で路上ライブを続ける2人組の音楽ユニット「話花場(わかば)」が、10月に活動20周年を迎える。2人は介護福祉士と看護師となり、命の現場でがんや難病の患者と触れ合う中、生きる素晴らしさや闘病の苦しみをテーマに170曲以上を作ってきた。「前向きに生きる力を届けたい」と、路上では観客の悩みや身の上を聞いて1曲を選び、力強い歌声でエールを送る。

■週2回路上ライブ、聴衆の近況聞き選曲

 2人組は、近江八幡市出身で幼なじみの介護福祉士杉本天人さん(36)と看護師大林大輔さん(37)。高校2年の時にギターを始め、いつまでも歌の楽しさや初心を忘れないでいようと、ユニットを「若葉」と名付けた。

 大林さんが作詞と作曲を担当。杉本さんは曲のメッセージを読み取り、2人でハーモニーを響かせる。歌で笑顔になり、何度も来てくれる人の姿がうれしくて、大林さんが県外に進学しても帰省した際にライブを続けた。

 当初は恋愛ソングが多かった。転機は、大林さんの看護師への就職だった。全身の筋肉が動かなくなる難病筋萎縮性側索硬化症(ALS)の70代の女性と出会った。「こんな体で、生きる意味なんてない」と嘆く女性の力になりたくて、病室でライブを開くと、涙を流して喜んでくれた。

 険しかった女性の表情に笑顔が戻るようになり、「歌には人を支え癒やす力がある」と実感。患者らの痛みに向き合い、共感しやすい励みになる歌を作ろうと決めた。病院では患者に思いを届ける手紙として歌詞カードをプレゼントし、病室でミニライブを開く。

 ―「頑張りすぎないでね」って言われるのも嬉しいけど「頑張ってるの知ってるから」はもっと嬉しくなるんだ

 飾らない率直な歌詞を、路上で週に2回ほど届けてきた。2人を囲む聴衆一人一人に近況を聞き取り、それに合った曲をプレゼントする形にこだわる。「話に花が咲く場でありたい」。2年ほど前にユニット名を「話花場」に変えた。

 活動20年記念の大事な年を、新型コロナウイルスが襲った。路上ライブは2月から自粛。それでもインターネットでライブを発信し始め、6月には駅前でのライブ再開を果たした。

 一番うれしいのは「話花場が人生の一部になっている」という言葉という。曲をふと口ずさんでもらったり、高校時代からの観客が母となり、子どもを連れて来てくれたり。甲賀市の会社員男性(28)は「話花場の人生をそのまま聞く感覚で、元気をもらえる」と魅力を語る。2人は「僕らの歌やライブが、みんなの帰ってくる居場所でありたい。死ぬまで歌い続ける」と力を込める。

 20周年記念のイベントを滋賀県内各地で開いている。