認知症による行方不明者が7年連続で増えている。

 徘徊(はいかい)中に事故やトラブルに巻き込まれる恐れがあり、命を落とすこともある。認知症の人を地域で親身になって見守り、迷っても速やかに見つけ、わが家に戻せる仕組みづくりを急がねばならない。

 認知症か、その疑いが原因で行方不明となり、警察に届け出があったのは、昨年1年間で1万7479人に上った。前年より552人増え、警察庁が集計を始めた2012年以降毎年、過去最多を更新。この7年で1・82倍になったという現実を重く受け止めたい。

 うち所在確認できなかった人は245人。18年以前に届け出があった人を含め、事故に遭うなどして年間460人もが亡くなったのは痛ましい。一方、約7割が受理当日に発見され、大半の不明者は1週間以内に保護された。ただ見つかるまで2年以上要した人が4人もいた。

 どこかで迷っていないか、倒れていないか、と案じる家族の心労は察するに余りある。

 団塊世代が75歳以上となる25年には、認知症の高齢者が5人に1人に当たる約700万人に達すると推計されている。認知症は誰もがなり得ると言える。

 政府は昨年6月にまとめた認知症対策大綱で、「共生」と併せ「予防」を柱に据える。だが認知症の根本的な予防、治療法はなく、認知症の増加に歯止めをかけられるかどうか。

 今後も認知症による不明者の増加は続くとみられるが、高齢者の外歩きを抑制するのは難しい。だからこそ万一の際の早期発見に向けた対策強化は急務である。警察や行政、ICT(情報通信技術)に強みを持つ民間企業などが密接に連携し、地域ぐるみで見守る態勢づくりが欠かせない。

 捜索する際に早期発見に役立つ衛星利用測位システム(GPS)の小型端末機の貸与や利用助成は、京都や滋賀でも多くの自治体が導入している。事前に心配がある人の特徴や連絡先を登録する仕組みを整備している地域もある。家族などの情報を読み取れるQRコードを衣服に貼り付けたりする取り組みも広がりつつある。

 京都府警向日町署は、今年2月、GPS機能付きドライブレコーダーを搭載しているタクシー会社2社と、認知症などの不明者の捜索に協力してもらう協定を結んだ。位置情報を受信できる機能を活用し、発信器のタグを持つ高齢者らの発見につなげるという。さまざまな場所に移動するタクシーの強みを発揮できる支援に期待したい。

 亀岡市でも今春、ごみ収集の担当者が「認知症サポーター」となり、見守り活動を始めた。定期的に地域内を巡る収集車の機動力を生かした取り組みだ。

 警察や行政だけで解決する問題ではない。各地で道に迷った高齢者を捜す訓練や店舗での対応学習など市民レベルの活動が広がっているのは心強い。

 認知症になっても、住み慣れたわが家で暮らし続けたいと考えている人は多いに違いない。地域ぐるみで高齢者の徘徊を受け止め、見守っていけるか。社会の包容力が問われている。