安倍晋三首相の施政方針演説などに対する各党代表質問がきのうから衆院本会議で始まった。

 焦点となっている厚生労働省の勤労統計不正を巡り、与野党幹部はいずれも厳しい姿勢を示した。参院選をにらんで対決色を鮮明にした形といえる。

 残念だったのは、安倍氏が野党の質問に正面から答えなかったことだ。肝心なことを言わない答弁姿勢がまたも繰り返された。

 統計不正でアベノミクス成功の根拠が崩れたとの指摘には、連合の賃金関連の調査を引き合いに「5年連続で最高水準の賃上げが継続している。所得環境は着実に改善している」などと返した。

 沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題や原発政策見直しなどを巡っても議論はすれ違った。最初からこんな展開では熟議を尽くせるのか心配だ。

 立憲民主党の枝野幸男代表と国民民主党の玉木雄一郎代表は、質問冒頭に統計不正問題を取り上げ、全容解明や根本匠厚労相の更迭を要求した。これに対し安倍氏は陳謝こそしたものの、「国民の信頼を回復するための努力を積み重ねたい」「再発防止に全力を尽くすことで政治の責任を果たす」との答弁に終始した。

 世論の反発を警戒し、低姿勢の安全運転で国会を乗り切ろうとする思惑が透ける。だが失われた信頼の大きさや調査のずさんさからして、これでは政治責任を果たす姿勢が国民に伝わらないのではないか。責任を重く受け止めているならば、もっと真摯(しんし)に対応すべきである。

 消費税増税について「全世代型社会保障の構築に向けた安定財源確保のため必要だ」と繰り返した。増税対策に胸を張ったが、財政健全化の具体策についての言及はなかった。

 北方領土問題では4島を「主権を有する島々」と述べ、従来の固有の領土と表現しなかった。ロシアとの条約交渉を踏まえたと思われるが、分かりにくさが残った。

 野党の質問からも立場の違いが改めて浮き彫りとなった。一致して政権を追及するなら、やり方には工夫が必要ではないか。

 消費税増税について枝野氏が凍結を主張したのに対し、玉木氏は軽減税率導入に反対した。政権との対決姿勢を強めるのは同じでも攻め方がばらばらでは巨大与党の壁は突き崩せない。参院選に向け、与野党対決に持ち込むには対立軸を、より明確にして議論を深めるべきだ。

(京都新聞 2019年01月31日掲載)