開発が進む新型コロナウイルス感染症のワクチンについて、実用化前から各国の獲得競争が過熱している。

 欧米諸国は製薬会社に巨額の資金を拠出し、引き換えに自国への供給量を確保している。日本も開発企業との交渉を始め、欧米に追随する動きをみせている。

 ワクチン開発には膨大な費用がかかるが、資金力を背景にした先進国の「囲い込み」は価格の高騰を招きかねない。発展途上国に行き渡らなくなるといった独占の弊害が懸念されている。

 感染は中国や欧米から、医療態勢が脆弱(ぜいじゃく)な新興国や途上国に広がっている。一国の対応だけで封じ込められないのは明らかだ。近視眼的な自国優先のワクチン確保では、世界的な感染拡大防止にはつながらない。

 世界保健機関(WHO)によると、新型コロナ感染症を予防したり、症状を軽減したりするワクチンの開発計画は現時点で約160ある。人に投与する臨床試験を段階的に進めて安全性などを確認する必要があるが、いずれも実用には至っていない。

 開発段階でのワクチン囲い込みに先鞭(せんべん)をつけたのは米国だ。「ワープスピード作戦」と名付けた戦略を打ち出し、すでに英国や自国の製薬会社との間でワクチン計4億回分の入手で合意した。

 ただ、確保したワクチンで期待通りの効果が得られるかは不透明だ。専門家からは、開発が先行しているワクチンには実用化した例がない技術を使っているものが多いと心配の声が上がっている。安全性や有効性を見極める観点からも、国の枠を越えて知見を集めることが重要ではないか。

 ワクチン開発を巡って日本政府は、感染症対策の国際組織CEPI(セピ)に資金を出し、各国の大学や企業と連携するなど国際協調を重視してきた。特許権を国際的に共有し、途上国などにワクチンを安価に供給しやすくする構想も提案している。国際社会や製薬会社の理解、賛同を得る努力を続けてほしい。

 ワクチンの有無は国の経済活動にも関わるだけに、各国は開発や確保に躍起になりがちだ。中国は自国で開発したワクチンがアフリカ諸国にも普及するよう配慮する可能性を示唆するが、外交上の影響力を拡大させる狙いがあるとみられている。

 いずれの国も、自国の権益拡大に利用するような姿勢が露骨すぎれば、国際的な批判を招きかねないことに留意すべきだ。