「学園もの」の旗手として活躍した武本さん。高校時代から才能を発揮していた(2019年1月撮影)

「学園もの」の旗手として活躍した武本さん。高校時代から才能を発揮していた(2019年1月撮影)

文芸部の部室から見つかった高校時代の武本さんのイラスト

文芸部の部室から見つかった高校時代の武本さんのイラスト

文芸部の部室で、高校時代に武本さんが描いたイラストを発見し、青春時代の友を懐かしむ同級生たち

文芸部の部室で、高校時代に武本さんが描いたイラストを発見し、青春時代の友を懐かしむ同級生たち

 30年前のイラストが、文芸部の部室にあった段ボール箱から見つかった。

 希代のアニメ監督の足跡をたどって訪れた母校の赤穂高(兵庫県赤穂市)。取材に同行してくれた同級生の男性(48)はイラストに目を落とし、20秒間沈黙した。「たけちん、これが得意だったんだよな」。青春時代の友を懐かしんだ。

 描かれていたのは2頭身のキャラクター。事件で亡くなった武本康弘さん=当時(47)=が、アニメーターになる夢をかなえた後も好んで描いたモチーフだった。

 武本さんは京都アニメーションが得意とする「学園もの」の旗手として活躍した。監督作の中で、脂の乗った2012年に手がけた学園ミステリー「氷菓」は、歴史ある古典部を舞台に高校生の心理描写を追究した秀作として知られる。描き出そうとしたのは、輝きだけでも、痛みだけでもない、青春のほろ苦さだ。

 高校時代の仲間たちは、描画やシナリオ創作で才能を発揮する武本さんの姿を克明に覚えていた。それは、氷菓の主人公が天才的な推理力で周囲を圧倒していく光景とも重なる。

 当時の文芸部員は、机を囲んで会話しながら物語を攻略するゲーム「テーブルトーク・ロールプレーイングゲーム」に熱中した。2年生の武本さんが進行役を担い、シナリオを書き進めた。秋に始まった物語は翌年3月まで続いた。

 出色の出来栄えだったという。最後の敵を倒し、崩れ始めた迷宮を脱出する間際、究極の選択を迫られる。助かる条件は仲間のうち2人が犠牲になること。共に行動する中で恋に落ちた女盗賊と魔法使いが手を挙げ、仲間を救う。

 女盗賊役の女性の先輩は、その結末に涙をこぼした。文芸部仲間だった同級生の男性は「ここまで人を感動させられるんかと驚いた。自分が背伸びしても届かない存在だった」と振り返る。