修理工事が完了した竹生島の宝厳寺唐門(長浜市早崎町)=同市提供

修理工事が完了した竹生島の宝厳寺唐門(長浜市早崎町)=同市提供

 琵琶湖の竹生島(滋賀県長浜市)に建つ宝厳寺(ほうごんじ)の国宝などを修理する滋賀県発注工事を巡り、県職員が業者に入札情報を漏らしたとされる事件で、大津地検は14日、官製談合防止法違反の罪などで、県文化財保護課主査(41)を、公契約関係競売入札妨害の罪で、長浜市の工務店社長(61)をそれぞれ起訴した。

 滋賀県発注の国宝保存修理工事で、2カ年度分の入札情報を業者に漏らしたとして、官製談合防止法違反などの罪で起訴された県文化財保護課主査。国が承認する「文化財建造物修理主任技術者」として湖国の国宝修理の大半を監理し、業界での信頼も厚かった人物がなぜ、入札情報を漏えいしたのか。背景を探った。
 舞台となった琵琶湖・竹生島の宝厳寺(ほうごんじ)唐門など県内には建造物の国宝が22件、さらに重要文化財が186件ある。京都府(国宝51件、重文300件)、奈良県(同64件、264件)に次ぎ、国内で3番目に多い。
 これらの修理工事の設計監理を行う主任技術者は、京都と奈良にはそれぞれ10人いるが、滋賀は2人で実質的に主査1人が現場を回っていた。工事の予定価格の基になる設計価格の積算や、延暦寺(大津市)の国宝・根本中堂などの修理現場数カ所を掛け持ち、「業務の負担が大きく、不満があったのではないか」と関係者は語る。
 「どんな理由でも事実なら漏えいは許されない。だが、人員態勢や入札の問題点は洗い出す」。主査らの逮捕を受け、県は職員の法令順守の徹底を図るとともに、入札の在り方などの検討に入った。
 県の保存修理工事の入札の大半は単年度で実施。国の補助金が1年ごとに出るためだ。宝厳寺の工事入札も2013年度からほぼ毎年あり、文化財保護課は「年度ごとに調査を区切れ、丁寧に破損状況を確認し、学術的調査をしながら工事を進められる」とメリットを説明する。
 一方、関係者によると、数年の工事で年度替わりに業者が代わると、新たな経費が発生したり、作業効率が落ちたりする面もあるという。「工事への理解が深い業者にやってほしかった」との主査の供述趣旨と符合するかのように、県内のある業者は「翌年他社に取られると思うと、責任や愛着が持ちづらい」と語る。同寺の工事では、主査と共謀したとされる社長の工務店が起訴内容の18年度と昨年度など3年連続で落札し、落札率は全て99%以上。ただ、同課は実際の経緯は不明として「検証の対象になりうる」とする。
 京都府は近年、入札手続きを省き効率を高めるため、2年契約にするケースが増え、3~4年契約も検討しているという。県も過去、根本中堂の工事入札を2年契約で行ったが、「さらに複数年契約のメリットを学び、積極的に導入することも検討する」(中嶋実文化スポーツ部長)とする。
 当面、県には主任技術者が1人となり、文化財監理への影響が懸念される。主任技術者の穴埋めが急務だが、豊富な実務経験を要するため、直ちに確保はできない。県は現在、本年度予定していた工事の組み替えに追われている。ある職員は「目が届きにくくなる文化財が増える。先行きが心配だ」と頭を抱えた。