京都新聞の情報公開請求に対して滋賀県教委が開示した処分記録。「女性が公表を望んでいない」として職名などは黒塗りになっていた

京都新聞の情報公開請求に対して滋賀県教委が開示した処分記録。「女性が公表を望んでいない」として職名などは黒塗りになっていた

 犯罪被害の中でも訴えづらいといわれる性被害。強制わいせつの疑いで5月に草津市の公立小学校の元校長が逮捕された事案を取材した。被害を訴えた部下の女性は1年半近く苦しみ続けた末、勇気を持って訴え出た。しかし、被害を聞き取り処分する側の、性被害に対する先入観や理解不足など、さまざまな壁に苦悩した。フラワーデモなど性被害根絶を訴える声が高まる中、被害者保護や支援、相談体制の充実など、被害を潜在化させない土壌づくりが必要だ。

 元校長は、部下だった女性に対して体を触るなどのわいせつな行為をしたとして滋賀県警に逮捕され、6月に不起訴処分になった。

 女性は被害を受けた当時、職場のトップを訴えることへの恐れ、被害に対する恥辱感、周囲に知られ中傷にさらされるかもしれないという不安など、さまざまな思いに押しつぶされたという。

 女性が草津市教育委員会に被害を訴え出た後、事案の聞き取りや元校長の処分を決めた県教委の懲戒審査会で、女性に寄り添う対応がなされていたか、取材を通じて疑問に感じた。

 女性は事案を公表する覚悟があったにも関わらず、聞き取りをした草津市教委は公表、非公表の希望について明確に確認しないまま、「公表を一切望んでいない」と県教委に報告。その結果、県教委は事案自体を公表しなかった。市教委は取材に「『自分が被害者だと分かるのは困る』という女性の言葉を『事案自体の公表を望んでいない』と受け取ったのかもしれない」と答えた。

 京都新聞が情報公開請求した時も、県教委は懲戒処分の対象が教育現場のトップだという事実を、黒塗りで隠した。市教委、県教委の不祥事に対する自覚の欠如、まるで被害をなかったものにするかのような印象を受けた。

 県教委は懲戒処分の対象行為のうち、わいせつ行為は原則、最も重い免職とする基準を定めている。今回、懲戒審査会は、暴行や脅迫がなかったことなどを理由にわいせつ行為と認定せず、セクハラ行為として停職6カ月の処分にした。職場の地位を利用した「目に見えない強制力」は考慮しなかったようだ。

 今回の逮捕事案を受けて、県教委は、教職員や児童生徒へのハラスメント被害のアンケート調査や、ハラスメントの外部相談窓口への弁護士の配置、懲戒審査会への女性有識者のオブザーバーの参画について検討を進めるという。

 政府は先月、性犯罪対策を強化する方針をまとめた。取り組みを強化するには、実際に運用する側の意識の変革が不可欠だ。被害を訴えやすくする土壌をつくり、訴えた勇気にしっかりと応える。職場で受けたセクハラについて、被害者の大半が訴え出ることができなかったとする調査結果もある。性被害の実態を把握することが、被害根絶への第一歩になる。