トゲナナフシ。メスだけで繁殖できる。

トゲナナフシ。メスだけで繁殖できる。

<いきものたちのりくつ 中田兼介>

 ウソをつくと鼻が伸びるピノッキオ。物語の後半で、大きなサメにのみ込まれてしまいます(ディズニー映画ではクジラですが、オリジナルの小説ではサメです)。その胃袋の中でピノッキオは、生みの親であるジェッペットさんと再会します。ジェッペットさんは、サメがのみ込んだ貨物船に残っていた缶詰やビスケットを食べて、2年間おなかの中で生きていたのです。

 現実の動物の胃袋や腸ですが、どんな生き物でも消化してしまうわけではありません。さまざまな微生物が住んでいますし、植物の種子には鳥などに食べられたあとふんの中にまじって排出され、落ちた場所で芽を出すものが多く見られます。

 動物はどうかというと、ヘリグロヒキガエルに食べられたメクラヘビの一種がおなかを通り抜けてお尻から出てきたと考えられている例があります。とはいえ、ヘビはすぐに死んだので、カエルのおなかで生き続ける能力は持っていないようです。

 もっと普通に、食べられても死なない例がナナフシ類で見つかっています。ナナフシの中にはメスだけで繁殖できる種がいて、1匹捕まえて虫かごに入れておくだけで、気がつくと床が卵でいっぱいになっていたりします。神戸大の末次健司さんたちは、こんなナナフシ数種類の卵を鳥に食べさせて、出されたふんの中を調べてみたところ、一部の卵が消化されずそのまま出てきて、中にはふ化する場合もあることを発見しました。ナナフシ類の卵は非常に硬いので、消化液などなんのそのなのでしょう。

 ピノッキオたちはサメから脱出するとき、大きく開いた口の向こうにきらめく星と月を見ました。じゃあナナフシは鳥の外に出るときどんな光景を見るのでしょう? うっかり思いましたが、卵だから目も何もなかったのでした。(京都女子大教授)


◆中田兼介 なかた・けんすけ 1967年大阪府生まれ。京都大大学院で博士号取得。著書に「クモのイト」「びっくり!おどろき!動物まるごと大図鑑」など。「図解 なんかへんな生きもの」を監修。