市民の投票行動も、封じ込めの対象にされてしまうのだろうか。

 香港に対する中国の習近平指導部の統制が加速する中、9月の立法会(議会)選挙に向け、民主派に同調する動きが広がっている。

 民主派が候補者乱立による票の奪い合いを防ぐため行った予備選に、61万人の有権者が投票した。

 主催者目標(17万人)を大きく上回った。香港政府が予備選は国家安全維持法(国安法)違反の可能性があると警告したにもかかわらず、根強い支持を示した形だ。

 消滅の瀬戸際に追い込まれた香港の自由と民主主義を、何としても守りたい-。そんな市民の必死の思いが感じられる。

 だが、国安法を導入した習指導部は民主派の伸長を阻止する構えで、締め付けが強まりそうだ。

 国家体制が異なるといっても、民意を集約するべき選挙への強権的な介入を、国際社会が納得するはずもない。習指導部はその点をしっかり認識すべきだ。

 立法会は定数70で、直接選挙枠と職能代表枠から半数ずつ選ぶ。前回2016年選挙で民主派は直接選挙枠では過半数を制したが、全体では30議席にとどまった。

 今回は予備選での投票者数の多さから、議会過半数を獲得できる見通しが出てきたという。

 これに対し、香港政府高官は、予備選そのものが国安法の「国家政権転覆罪」に当たる可能性が高いと発言し、投票への参加をけん制。香港警察は電子投票システムを担う事務所を捜索した。予備選への露骨な介入といえる。

 18日からの立候補手続きでも、習指導部は民主派の排除を香港政府に指示するとみられる。一部の民主派は米国などに中国への制裁を求めてきたが、こうした活動は国安法で「外国勢力との結託」による犯罪とされているためだ。

 あらゆる手段で民主派を抑え込もうという姿勢である。習指導部への反発が高まり、立法会選挙の結果に影響するのを警戒しているのは明らかだ。

 警察に捜査令状なしでの家宅捜索を認め、通信傍受を可能にするなど、国安法施行からわずか半月で香港の社会は統制色が急速に強まっている。この上、選挙まで管理が進めば、市民は政治的な要求も一切口にできなくなろう。

 香港市民に関して、英国やオーストラリアは滞在権の拡充などで支援の動きを見せている。強権を振るう大国に対しては、国際社会が厳しい目を向けていることを示し続ける必要がある。