政府が向き合うべき国防の課題と、その解決の難しさは、よく理解できる。

 先の閣議で報告された2020年版防衛白書である。

 記述の多くを北朝鮮のミサイル開発と、中国の軍備拡張路線に割いた。緊張した状況の続く東アジア情勢を見渡せば、当然のことだといえよう。

 北朝鮮の新型ミサイル開発は、「重大かつ差し迫った脅威」と位置付けた。

 昨年5月以降に発射された3種類の新型短距離弾道ミサイルは、固体燃料を使用することで、低空飛行ができると分析し、発射の兆候を把握するのが困難になりつつあるとした。

 北朝鮮が、ミサイル防衛網の突破を狙っているのは、明らかである。だが、これに、どうやって対処するかは定かではない。

 秋田、山口両県で地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」を配備する計画を断念したことは、白書の締め切りの関係で盛り込めなかったという。

 代替策は、国家安全保障会議(NSC)で「新しい方向性を打ち出す」と訴えた。これだけでは、迎撃システムの推進派からも無責任との声が上がりそうだ。

 自民党では、敵基地攻撃能力の保有論が高まっている。どう結論付けるのか、大きな課題を背負ったようだ。

 中国の軍拡路線を取り上げて、「安全保障上の強い懸念」であると明記した。

 透明性を欠いた国防費の著しい増加や、軍事利用可能な先端技術の開発と軍民融合政策は、大きな圧力となる。具体的な装備では、極超音速の次世代弾道ミサイルや国産空母の導入を、看過できないとしている。

 また、沖縄県・尖閣諸島周辺での領海侵入については、「現状変更の試みを執拗(しつよう)に継続している」と強調した。

 「執拗に」との表現は今回、初めて用いられたものだ。南シナ海への進出も含め、中国の脅威がさらに増している、とみている。

 新型コロナウイルスの世界的な感染に絡む中国の動向にも触れ、「自らに有利な国際秩序・地域秩序の形成や影響力の拡大を目指している」と判断した。

 だが、有効な対抗措置が、具体的に提示されていないのは、残念である。白書には、国防に対する国民の理解を深める狙いがある。これまでよりも、説得力を備えてもらいたい。