新型コロナウイルスの感染予防に向けて客室の消毒を徹底する宿泊施設(16日午前11時、京都市下京区・ゲストハウス 京都コンパス)

新型コロナウイルスの感染予防に向けて客室の消毒を徹底する宿泊施設(16日午前11時、京都市下京区・ゲストハウス 京都コンパス)

 政府が22日から始める予定の観光支援事業「Go To トラベル」に、京都の観光業界で期待と不安が交錯している。東京都を中心に全国で新型コロナウイルスの感染者が急増し、旅行者の受け入れに伴う感染の懸念が拡大。各地で異論が噴出する中、国は16日に割引対象から東京発着の旅行を除外する方針を明らかにした。業界が渇望した政策は、効果が見通しにくくなりつつある。

 「期待はとても大きかったが、今はもろ手を挙げて賛成できない」。古い京町家を改装した「ゲストハウス 京都コンパス」(京都市下京区)を経営する野上嘉之さん(67)は同日、政府のキャンペーンに対する複雑な心情を打ち明けた。

 2014年に夫婦で始めたゲストハウスは、外国人観光客の急増を追い風に宿泊者が増加し、昨春には稼働率90%に達した。だが、今年はコロナ禍で予約キャンセルが続出し、3月以降は「宿泊客が1日平均1人未満」(野上さん)に低迷。収束が見通せない中、ウェブで資金を調達するクラウドファンディングに乗り出し、2年間有効な「未来宿泊券」を返礼に付けた。

 今月22日からの「Go To」開始が決まると、空気清浄機やサーモグラフィーを急いで発注。感染予防に万全を期す一方、感染者が増え続ける状況に対し、「営業している以上、感染が広がる地域から来ないでとも言えない」と頭を悩ませる。

 祇園祭の山鉾巡行や五山送り火など京都の夏を代表する行事が中止・縮小となり、地元の多くの宿泊施設は7、8月の集客に苦戦する。京都市の大手ホテル担当者は「『Go To』の問い合わせは非常に多い。京都の観光業界に残された最後の希望だが、接客する従業員に不安が広がっているのも事実」と明かす。

 効果を疑問視する声は、業界団体からも相次ぐ。京都府旅館ホテル生活衛生同業組合の小野善三理事長は「観光は訪れる人、地域住民、事業者全ての利益につながるのが理想だが、三方が不安な状態で始めても需要喚起が長続きしないだろう」と予想し、「今は時期尚早だと感じる」と話す。

 「もし感染が広がれば、秋の観光シーズンの需要までつぶれかねない」と憂慮するのは、土産品店などでつくる京都物産出品協会の津田純一会長。東京除外の方針には「現実的な方策だと思うが、みんなが安心して旅行できる雰囲気には遠い。前例がないので、実施した後の検証が大切になる」と指摘した。

 一方で人口が多い首都圏の需要は大きい。京阪バス(南区)が運行する定期観光バスは、18年度の乗客の3割が関東在住者だった。鈴木一也社長は「関東からの集客減は避けられず、想定した需要は見込めない。痛手だが、当面は関西圏の需要を取り込みたい」とし、キャンペーン戦略を練り直す考えを示した。