高橋さんが、高校時代のノートに描いていた挿絵

高橋さんが、高校時代のノートに描いていた挿絵

高橋さんの手がけた楽器のイラストが掲載された「響け!ユーフォニアム」の関連書籍

高橋さんの手がけた楽器のイラストが掲載された「響け!ユーフォニアム」の関連書籍

スタッフから全幅の信頼を得た高橋さんは、吹奏楽部が舞台の「響け!ユーフォニアム」シリーズ(2015年~)で、楽器の表現をさらに突き詰めた。題材は金管楽器や木管楽器。非対称に湾曲し、微細なパーツを備えることから、手描きのアニメーションで描写するのは最も困難とされてきた。

トランペットやユーフォニアムを3次元で頭にイメージし、さまざまな角度から方眼紙に描き起こすことで、作画スタッフに見本を示した。仕上がった原画の楽器に金属の放つ光沢と影を描き加え、アニメーションという平面の世界に、立体的な楽器を違和感なく溶け込ませた。

膨大な作業で味わった苦労を語る高橋さんの肉声が、作品のDVDの副音声に残されている。「夢に出てきましたよ。いい所まで行くんだけど、肝心な所がぴかぴか光って見えない夢」

事件後、父の喬造さんは、高橋さんが事件の半年前に作成したプレゼン資料を読み返してきた。その中で高橋さんはスタッフに向けて、3桁の背番号で入団したプロ野球の育成選手が1軍で活躍する例を挙げて努力の大切さを説き、「後輩には能力の高い人が多くいる。渡り合っていくためには生半可なことでは見透かされる」と、自らのアニメーター人生について記していた、という。

「腐らずに、いちずにやって、折れなかったんだと思う」。喬造さんにとって、高橋さんのメッセージは宝物になった。幼い子を残して逝った高橋さん。喬造さんは、孫へ伝えてやりたい。「お父さんは毎日頑張っていたよ」

2019年7月18日に発生した京都アニメーション放火殺人事件。理不尽に命を奪われたのは、アニメの力をまっすぐに信じ、世界中のファンに夢と希望を届けた人たち。連載「エンドロールの輝き」は、クリエーターとして生きた36人の足跡を丹念にたどることを目標にしました。それは、人数の多寡を表す「36」の数字からはうかがい知ることのできない、特別な物語です。(岸本鉄平、本田貴信)